“出遅れた”Windows Phone、Android 4強ベンダーの見方はOpen Mobile Summit 2011 San Francisco

» 2011年11月08日 10時00分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 今や、ワールドワイドで半数近くのシェアを獲得しているともいわれるAndroid OS。このままシェアを伸ばし続け、デスクトップ市場におけるWindows OSのような独占的存在になっていくのだろうか――。米サンフランシスコで開催されたモバイル業界向けイベント「Open Mobile Summit 2011 San Francisco」のパネルディスカッションにAndroid端末を開発する4強ベンダーのキーパーソンが登壇し、スマートフォン業界のトレンドと今後の見通しについて説明した。

 パネルディスカッションに参加したのは、韓Samsungの上級副社長ケビン・パッキンガム(Kevin Packingham)氏、韓LG Electronicsの上級副社長 ジンスン チョイ(Jinsung Choi)氏、英Sony EricssonのCTO ジョン・ウデンフェルド(Jon Uddenfeldt)氏、中ZTEの米子会社CEO リーシン チェン(Lixin Cheng)氏の4人。モデレーターはDeutsche Bankのディレクター、ブライアン・モドフ(Brian Modoff)氏が務めた。

Photo 左からモデレーターを務めるDeutsche Bankのブライアン・モドフ氏、ZTE USAのリーシン チェン氏、Sony Ericssonのジョン・ウデンフェルド氏、LG Electronicsのジンスン チョイ氏、Samsungのケビン・パッキンガム氏

スマートフォンブームを支えるのはサービスやソフトウェア

Photo Samsungのケビン・パッキンガム氏

 Samsung、LG Electronics、Sony Ericsson、ZTEの4社はいずれも、Androidを採用することでスマートフォンの販売台数を伸ばしてきた。中でもSamsungはスマートフォンの出荷台数で米Appleを抜いてトップに立つなど際立った成果を上げているが、Samsungのパッキンガム氏は「われわれの功績というより、ユーザーの求める価値が(Android端末と)マッチした」と控えめだ。現在、スマートフォン需要の推進役となっているのは、Facebookをはじめとするソーシャルサービスをモバイル端末で利用したいというニーズであり、「スマートフォンブームの中で大きな役割を果たしているのは、サービスやソフトウェア開発者」と指摘する。

 早い段階からAndroid端末を軸とする開発体制にシフトし、今や収益性の高いハイエンド端末中心のラインアップで売上を伸ばしているSony Ericssonのウデンフェルド氏は、「われわれの売り上げの80〜90%がスマートフォン。完全にAndroidカンパニーとなった」と述べる。ソニーによる完全子会社化にも触れ、「(スマートフォンはソニーの)コンシューマー家電の中心となり、状況は大きく変わる。これまでできなかったことができるようになる。ソニーにはたくさんのコンテンツがあり、Amazonのようにソニーもコンテンツを強みにできる」と統合効果に期待を寄せた。

端末メーカーの差別化戦略は

Photo LG Electronicsのジンスン チョイ氏

 市場で大きな存在感を示しているAndroidだが、問題点も浮かび上がっている。その1つが、メーカーならではの特徴の出し方が難しい点だ。ベースとなる機能が同じであるだけに、他社端末との差別化ポイントをどうするかが重要になってくる。

 LG ElectronicsのChoi氏は、3D表示に対応するディスプレイを搭載した「Optimus 3D」を挙げ、先進的なデバイスの搭載で差別化を図れると説明。あわせてバッテリーの持続時間を改善するなど、ユーザーのニーズに合った機能を提供することで対応する考えだ。Sony Ericssonのウデンフェルド氏はユーザーインタフェースやカメラを挙げ、Samsungのパッキンガム氏は「市場のトレンドをみながら適応していく」とした。

 3社とアプローチが異なるのが、インフラ事業も手がける総合ベンダーとして知られるZTEだ。同社のチェン氏は「(他社のように)コンシューマー視点からではなく、キャリアやインフラの視点からスマートフォンを見ることができる」と胸を張る。スマートフォンがネットワークに与える影響など、インフラ側の問題を見ながら端末側の機能を改善したり、必要な機能を加えたりといったことが強みになると強調した。

 もう1つは、GoogleによるMotorola Mobility買収の影響だ。LGのチョイ氏は、仮にGoogleがMotorolaと組んで垂直統合型に移行した場合、Androidメーカーを敵に回すことになるため、「Googleはそれを望んでいないはず」とみる。他の3社も同じ考えで、懸念はないと断言している。

 今回の買収がAndroid端末の開発メーカーにメリットをもたらすと話すのは、Samsungのパッキンガム氏だ。Googleがハードウェアの開発部門を持つことで、より深いレベルでOSとハードウェアを統合するための情報が公開されるとし、これがカメラや位置情報関連機能などの改善につながるという見方を示している。

Mangoは出遅れたのか

 Android端末をラインアップの主軸に据えている4社だが、Microsoftがリリースした「Windows Phone 7.5」(Mango)についてはどう考えているのだろうか。9月にWindows Phone 7.5端末を発表したSamsungは、「Microsoftをリスクヘッジ戦略として見ているわけではない」と述べ、良好な関係を築いていることをアピール。かつてWindows Mobileの主力ベンダーだったLG Electronicsのチョイ氏は、「メインはAndroid、Windowsはその次」としながらも、「ユーザーインタフェースなどが大きく改善されている。出遅れ感はあるが、チャンスはあると思う」(チョイ氏)と述べた。

 一方、2008年にXperiaブランドの初代モデルとしてWindows Mobile搭載機「Xperia X1」を投入したSony Ericssonのウデンフェルド氏は、「Androidは勝ち馬。(Mangoは)出遅れた。iOSとAndroid以外に新しいものが入るとすれば、WebベースのOSではないか」とMangoの将来性にはネガティブな見方を示している。

Photo Sony Ericssonのジョン・ウデンフェルド氏(写真=左)とZTE USAのリーシン チェン氏(写真=右)。チェン氏が手にしているのは年内に発売するWindows Phone 7.5搭載機

 Windows Phone 7.5に大きな期待を寄せるのがZTEのチェン氏だ。「iOSとAndroidが市場を独占しているが、iOSは(端末メーカーには)閉じられている。われわれが利用できるのはAndroidしかなく、業界にはもう1つのOSが必要」(チェン氏)。

 チェン氏はステージ上で、年内にWindows Phone 7.5搭載機を欧州市場向けに投入する計画を明らかにしながら、「Microsoftは市場に反応してハードウェアベンダー側との関係を変えている。Mangoなら、開発に要する時間が半分程度まで短縮できる」と述べ、「今後、Mangoを搭載したさまざまなモデルが登場し、力強い復活を遂げるだろう」と予言した。

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