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“Android”でケータイ市場はこう変わる――「HT-03A」で加速するイノベーションT-Mobile G1ユーザーの実像とは

ついに日本に上陸したAndroidケータイ「HT-03A」。開発したHTCのデビット・コウ氏は、世界初のAndroidケータイ「T-Mobile G1」のユーザー像を紹介し、HT-03A投入で起こる新たなイノベーションを予言した。

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「HT-03A」を手にするHTC Nippon代表取締役社長のデビット・コウ氏

 NTTドコモから登場した国内初のAndroidケータイ「HT-03A」。開発メーカーのHTCは5月20日、日本にAndroidケータイを投入する狙いと、今後のスマートフォン事業について説明を行った。

 HTCは世界初のAndroidケータイ「HTC DREAM」(T-Mobile G1)を手がけ、2009年2月には第2弾の「HTC Magic」を発表した。HT-03AはこのHTC Magicをドコモ仕様にしたもので、ソフトの日本語ローカライズやFOMA基地局などインフラへの対応が図られている。ハードウェア上の違いはほとんどなく、利用できる機能やサービスもHTCやGoogleのグローバル戦略にもとづいた“世界基準”なのが特徴だ。HTC Nippon代表取締役社長のデビット・コウ氏はHT-03Aを、「ドコモ、Google、HTCがの3社がコラボレ−トした、まさに“ケータイするGoogle”といえる端末だ」と紹介した。

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「HT-03A」ボディカラーはホワイトとブラックの2色

 Googleが開発したプラットフォームを採用しただけに、HT-03AはGoogleのオンラインサービスを使うことに最適化されている。例えばインタフェースにはタッチパネルに加えトラックボールを採用しているが、これはGoogle検索やGmailYouTubeなどをモバイル環境でもPCと同じように使うためだ。またGPSやモーションセンサー、地磁気コンパスといったデバイスを備えており、Google Mapsストリートビューと組み合わせることで、高度なケータイナビゲーションを利用できる。ストリートビューでは、端末の向きに合わせて画面内の視点が動くなど、拡張現実(AR)的なUIを実現した。

 またソフト(OS)面では、PC感覚で利用できるホーム画面やウィジェットを採用し、柔軟なカスタマイズ性も備えた。さらに、Android Marketから多彩なアプリケーションをダウンロードすれば、実用系から趣味、エンタテインメント、ジョークソフトまで、目的に合わせたさまざまなソフトや機能を端末に追加できる。

photophoto ポインティングデバイスとしてトラックボールを搭載。タッチパネル+ウィジェットの操作と合わせて、モバイル環境でも快適な操作感を提供する(写真=左)。背面にはGoogleのロゴが入る。GoogleはAndroidだけでなく、端末開発にも協力した(写真=右)
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端末は下部が少し厚くなっており持ちやすい

 コウ氏はこのAndroidケータイ(HT-03A)を国内市場に投入することで「日本の消費者に、より新しいユーザー体験を提供できるだろう」と述べた。それは、米国で発売された“T-Mobile G1”という前例があるからだ。

Androidユーザーはこんな人

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「T-Mobile G1(HTC Dream)」

 T-Mobile G1は、ドイツの通信事業者T-Mobileを親会社に持つ米T-Mobile USAが、2008年10月に発売した端末だ。「発売前に10万から30万台規模の発注があり、売上は予想から300%も上回った」(コウ氏)という。G1はその後、アメリカを皮切りに欧州でも発売され数カ月で100万台を売り上げた。現在は9カ国で発売されており、すでに200万台を出荷したという。

 発売から8カ月がたち、コウ氏はT-MobileがまとめたというG1ユーザーの傾向を紹介した。その内容は日本市場にも当てはまるものではないかと、コウ氏は予測する。

 「G1ユーザーの8割は毎日インターネットを利用し、5割が毎日無線LANに接続している。最低週1回はYouTubeやFaceBookを利用し、端末からアプリをダウンロードするという。ダウンロードしたアプリは平均40本で、これはかなり大きな数といえるだろう。また、彼らのデータ通信量は音声端末ユーザーの50倍に上る。さらに興味深いのは、G1ユーザーの半数が、音声端末からスマートフォンに乗り換えたという点だ」(コウ氏)

 国によってユーザー動向は違うが、コウ氏は日米の市場はよく似ていると話す。そのためHT-03Aの発売により、日本にもG1ユーザーのような新しい層が生まれ、モバイル市場のイノベーションを加速させる可能性があるという。

Windows Mobileとの関係は

 HTCといえば、Windows Mobileを搭載したスマートフォンメーカーとして知られている。同社は2008年、合計12モデルのスマートフォンを日本国内で発表・発売したが、そのすべてがWindows Mobileモデルだ。プラットフォームの違いはあれ、同社はWindows Mobile端末に“Touch FLO 3D”という独自UIを導入し、イノベーションを起こしたと胸を張る。

 そのHTCがWindows Mobileに加えてAndroidを採用し、さらなるイノベーションを追求するのはなぜか。コウ氏は「1つの形状、1つのOS、1つの技術では、多様化するニーズに対応できない。AndroidとWindows Mobileは補完関係にあるだろう」と話した。また、HTCがWindows Mobileへのこだわりがあるかといえばそうではなく、あくまで目的にそった手段としてとらえており、ユーザーニーズやHTCが目指すデバイスによって最適なプラットフォームを選んでいるという。

 しかしWindows MobileがHTCを“鍛えた”のは確かだ。HTCはPDAのOEMメーカーのころから、製品開発の速さに定評があり、特にWindows Mobileというプラットフォームへの取り組みは他に類を見ないもので、ビル・ゲイツ氏やスティーブ・バルマー氏らMicrosoftの経営陣がWindows Mobileに関する新発表を行うとき、傍らには必ずといっていいほど最新のHTC製スマートフォンの姿があった。

 こうしたスピード感はAndroid端末でも生かされており、現在のところ市販されているAndroidケータイはすべてHTC製だ。Samsung電子やHuaweiなどの“巨人”もAndroidケータイの開発表明を行っているが、すでに2機種目を発売しているHTCの前ではフォロワーにすぎない。そしてHTCは、さらなるチャレンジの姿勢を見せている。

 コウ氏は「HTCが日本に上陸して3年。これまでの活動を通じて、日本のユーザーのさまざまなニーズを把握できた。これからは開発期間をより短縮して、グローバルモデルの発表から日本投入までの間差を短くしたい。『HT1100』は国内投入まで12カ月かかったが、『Touch Diamond』は4カ月、『HT-03A』は2カ月だった。今後もいち早くグローバルモデルを取り入れ、日本のユーザーに世界的な価値を提供したい」と意気込んだ。

Androidケータイの気になるコストは?

 Androidが話題になる理由は、プラットフォームがオープンソースでできており、だれでも無料で使える点だ。そのため、低コストで高機能な端末を開発できると予想されている。しかしコウ氏は、「HT-03Aはほかの端末よりもコストがかかっており、“Androidケータイは低コストか?”かといえば、答えはノーだ」と話す。

 Windows CEのころから10年以上手がけ、いわば作りなれているWindows Mobileに比べ、最新のAndroidはまだまだ“こなれて”いない。端末全体のコストのうち、もともとOSの割合は小さく、無料になっても影響は少ない。一方で、新規で作らねばならないOS以外のソフト開発にコストがかかり、また各種センサーや操作デバイスなど、快適にAndroidを使うための要件が高く、ハードも高額になってしまうという。

 「今後は分からないが、現時点でAndroidケータイだから安くなるというのは間違いだろう」(コウ氏)

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