新電力などの電気事業者が既存の電力会社の送電網を利用する際の接続料金が安くなる。東京電力は9月から企業向けと家庭向けの電気料金を変更するのに合わせて、電気事業者向けの接続料金を約1割下げる。ただし電力の供給量が不足した時の料金を2割以上も引き上げる。
電力会社の送電網を開放する動きが少しずつ広がっている。政府の意向により、「新電力」などの電気事業者が電力会社の送電網を利用する場合の条件が緩和され、料金も徐々に下がってきた。そうした中、東京電力が先行する形で、送電網の接続料金を9月から引き下げる。
新電力などは顧客に電力を供給する際に電力会社の送電網を利用する必要があり、顧客の契約タイプに応じて電力会社に接続料金を支払う。契約電力が2000kW以上の「特別高圧」と50kW以上の「高圧」の2タイプで、それぞれ通常の電気料金と同様に月額固定の基本料金と従量制の電力量料金が決められている(図1)。
この料金を東京電力は特別高圧で平均12.95%、高圧で平均9.72%安くする。新電力などが顧客に電力を供給するコストが下がるため、価格競争を含めて市場の活性化が期待できるわけだ。
ただし新電力などにとっては厳しい条件も付けられている。顧客との間で契約している電力量を供給できない場合が想定され、その際に電力会社が不足分を供給することになる。これを「負荷変動対応電力」と呼んでいるが、当然ながら新電力などは電力会社に対して不足分の電気料金を補てんしなくてはならない。この料金が9月から一気に2割以上も引き上げられる(図2)。
負荷変動対応電力に対する料金は2段階に分かれている。不足分が契約電力の3%以内であれば「変動範囲内電力料金」が適用され、この単価は電力会社が通常の企業向けに提供している料金と大差ない。しかし不足分が3%を超えると「変動範囲超過電力料金」になり、最高で1kWhあたり51.73円という高額が適用されてしまう。この超過電力料金が9月から25%以上も高くなる。
新電力などにとっては自家発電や再生可能エネルギーの買取分を含めて、安定した電力供給能力を維持する必要性がますます高まってきた。東京電力に続いて、ほかの電力会社も同様の料金改定を実施することが予想される。新電力は現在62社が登録されているが、今後さらに優勝劣敗が進むことは確実な情勢だ。
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