CNO(チーフ・エネルギー・オフィサー)が求められる時代に2013年の電力メガトレンドを占う(1)

いまや電力の問題は重要な経営課題になった。電気料金の値上げ、夏や冬の電力不足など、事業の運営を左右する問題が深刻さを増している。その一方で再生可能エネルギーが新たな収益源として注目を集める。まさに企業のエネルギー戦略を統括する経営幹部が必要な時代だ。

» 2013年01月07日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 企業の経営環境が複雑になっていくのに合わせて、欧米では複数の「CXO」(チーフXオフィサー)が役割を分担する経営スタイルが定着している。日本でもCEOやCFOの肩書を付ける企業は増えてきた。

 しかしCIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)のように、重要性は認識されながらも日本では定着していない役割が残っている。日本の企業が欧米と比べてITの戦略的な活用で後れをとっている、と言われる要因のひとつに挙げられる。

 そしていま新たに必要性が高まっているのが、エネルギー戦略の立案・実行責任者だ。すでに欧米では「チーフ・エネルギー・オフィサー」の肩書をもつ経営幹部が数多く登場している。日本でも重要性は変わらない。これから2020年に向けて大きなトレンドになるだろう。

 スマートジャパンでは2013年の最重要テーマのひとつとして、「チーフ・エネルギー・オフィサー」を広く提唱したい。すでに日本でも定着しているCEOと区別するために、「CNO(Chief eNergy Officer)」と書くことにする。あるいは「CEnO」でもよいかもしれない。呼び方は「シー・エヌ・オー」か「シー・エネ・オー」が適当だろう。

 ネーミングはともかく、CNOの役割やミッションは明らかで、今後の企業経営に計り知れない貢献をもたらす存在になるはずだ(図1)。

図1 CNO(チーフ・エネルギー・オフィサー)の概要

企業の社会的責任(CSR)を担う中枢ポジション

 特に電力の活用法とコストの最適化は多くの企業にとって喫緊の課題である。さらには環境保護の観点から再生可能エネルギーの導入がCSR(企業の社会的責任)の重要なテーマになってきた。可能な限りの節電を実行することによって電力不足の解消に協力することもCSRのひとつと言える。

 世界各国で環境保護の重要性を訴えているNGOのグリーンピースは、ITと電機の分野で国際的なメーカーを対象に「環境に優しい企業ランキング」を毎年発表している。その評価基準の中には製品やサービスの省エネ対策のほか、再生可能エネルギーの導入計画などが盛り込まれている。

 残念ながら現状では日本のメーカーの評価は低い。原子力発電を事業にする企業はもとより、電気料金の値上げを抑える目的で原子力発電所の再稼働を求めるような企業も、CSRの観点では厳しい評価を受ける。エネルギーに関する取り組みは全世界の企業が社会的な責任として求められるようになってきた。

「エネルギー・マニフェスト」に達成目標と実行計画

 CNOが取り組むべき経営課題を企業全体に浸透させるためには、「エネルギー・マニフェスト」を策定することが望ましい。「省エネルギーの推進」や「エネルギーの調達・供給」といった重点課題に対して、達成目標を設定し、そのための実行計画を具体的に提示するものだ。

 設定すべき目標としては、節電率、再生可能エネルギーの導入量、エネルギー関連の損益などが挙げられる。すでにCO2排出量の削減目標を設定している企業であれば、それも加えたマニフェストが必要になる。

 もはや「環境」という切り口ではとらえきれない経営課題が、電力を中心とするエネルギーの分野で拡大している。従来のような環境対策本部や管理本部といった組織体のままでは、的確なエネルギー戦略を素早く立案して実行することは難しい。

 CNOと少数精鋭の専門スタッフが活躍する時代が到来した。2013年は「CNO元年」になる。

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