太陽光の次は風力発電、バイオマスも全国で広がる2013年の電力メガトレンドを占う(4)

再生可能エネルギーが予想以上のペースで拡大を続け、我が国の電力事情は大きく変わる。太陽光発電の導入が企業・家庭ともに急速に増える一方で、大規模な風力発電所が続々と運転を開始する見込みだ。自治体や農林水産業を中心にバイオマスの取り組みも広がっていく。

» 2013年01月30日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 固定価格買取制度の対象になる5つの再生可能エネルギーのうち、最も活発に導入が進んでいるのは太陽光発電だ。買取の対象に認定された設備の数は制度開始から5か月で20万件近くに達し、発電能力を合計すると早くも300万kWを超えた(図1)。すでに大規模な原子力発電所や火力発電所に匹敵する規模に拡大している。

図1 再生可能エネルギーによる発電設備の導入状況(2012年11月末時点)。出典:経済産業省

太陽光発電は毎年300万kW以上に

 この導入ペースは2014年度まで続く可能性が大きい。というのも制度開始から最初の3年間は買取価格が高めに設定されることになっていて、その間に認定された設備で発電を開始すれば確実に利益を出せるからだ。太陽光以外の再生可能エネルギーでも採算性はさほど変わらないように買取価格が設定されているが、何と言っても導入の容易さが太陽光発電の最大の利点である。

 太陽光発電システムを備えたスマートハウスが住宅メーカー各社から発売されて、売れ行きは順調だ。企業や自治体では工場や施設の跡地の多くが使われないまま放置されていたが、太陽光発電の設置場所に転換することで新たな収益源として活用できるようになった。物流倉庫や学校の屋根にも太陽光発電システムがどんどん広がっている。

 政府が2012年9月に策定した「革新的エネルギー・環境戦略」では、2030年までに原子力に依存しないエネルギー供給体制を確立するためには、太陽光発電を毎年300万kWずつ増やしていく必要があると想定した(図2)。この戦略そのものは実現性を疑問視されているが、少なくとも太陽光発電の導入規模は想定をはるかに上回るペースで拡大している。

図2 2030年に向けた再生可能エネルギーの拡大イメージ。出典:国家戦略室

建設開始までに時間がかかる風力発電

 太陽光とともに期待が大きいのは風力発電だ。2030年までに毎年200万kWの導入が必要とされているが、今のところ固定価格買取制度で認定を受けた設備は30万kW程度にとどまっている。

 風力発電は太陽光と違って騒音が大きく、動植物など周囲の環境にも影響を与えかねない。このため建設計画の認可を受ける前に、地元の自治体に報告書を提出して意見を求め、必要に応じて環境保全の対策をとらなくてはならず、建設を始めるまでに時間がかかる。買取制度の認定設備が増え始めるのは2013年度に入ってからになる見通しだ。

 それでも風力発電の規模は確実に伸びていく。最新の大型風車だと1基で2000〜3000kWの発電能力があり、高原や海岸などで広い敷地があれば10基〜20基程度の設置が可能になる。1か所の風力発電所で2万〜6万kWの発電能力を実現することは難しくない。平均の発電能力が4万kWあれば、50か所の合計で200万kWになる。

 経済産業省の中に風力発電の建設計画を審査する専門部会がある。2012年10月と11月の会合で審査対象になったプロジェクトは49件にのぼった。風力発電で毎年200万kWの目標値は決して夢の数字ではない。近い将来には洋上の風力発電も現実的になり、建設できる場所は陸から海へ一気に広がる。

 風力のほかにバイオマスも有望だ。木材や農作物、ごみなどの廃棄物を含めると、全国各地に資源が豊富に存在する。太陽光や風力のように広い場所がなくても大規模な発電が可能になる点で有利である。大都市の廃棄物発電をはじめ、地域の活性化を目指して自治体と農林水産業の連携による取り組みも進んできた。

 農林水産省が主導する「バイオマスタウン構想」には全国から300以上の市町村が参画して、それぞれの地域の特色を生かしたバイオマスの開発プロジェクトを推進中だ。今後は各都道府県からバイオマスの認定設備が加速度的に増えていくだろう。

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