節電に対する報酬を柔軟に設定する技術が登場エネルギー管理

需要家に節電を要請し、節電量に応じて報酬を払う「デマンドレスポンス」の実験が各地で続いている。現在のところ、節電に対する報酬は一律で、事前に設定していることが多い。三菱電機は節電に対する報酬額を状況に応じて変動させる技術を開発した。

» 2013年02月18日 15時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 今回三菱電機が開発した技術は、節電してなるべく多くの報酬を得たい需要者と、節電に対する報酬の支払額を抑えたい発電事業者の双方の希望のバランスを取るものだ。季節や時間帯によって発電コストは変化する。供給電力が足りないときは電力取引市場で調達するという方法があるが、市場取引価格も時刻によって変動する。

 デマンドレスポンスを実施するときに節電に対する報酬を一律で決める方式では、発電コストや市場価格によって発電事業者あるいは需要家のどちらかのみが得をするということがある。

 例えば発電コストが安く、市場価格も低いときは、発電事業者としては節電対価を払ってまでデマンドレスポンスに協力してもらうと損をする。市場などで調達する方が得だ。反対に発電コストが高く、市場価格も高いタイミングでは、デマンドレスポンスを発動して、節電対価を払った方が発電事業者にとっては得だ。

 節電する需要家にとっては、発電コストが高く、市場価格も高いタイミングに節電協力したときは、より多くの報酬を得たいと考えるだろう。

 三菱電機が開発した新技術は、変動する発電コストと市場価格を参照して、節電対価を決定する。その価格は、発電事業者と需要家のどちらかのみが得をすることがないように決めるので、需要家も納得して節電に協力しやすくなる(図1)。発電事業者は最適な価格で電力を調達(あるいは節電してもらう)することが可能になるので、必要以上に発電施設を建設する必要がなくなり、コスト削減につながる。

図1 三菱電機が新開発したデマンドレスポンスの節電対価を自動的に決めるシステムの全体像。出典:三菱電機

 対価を柔軟に設定するだけでなく、各需要家の節電余力を見て、デマンドレスポンス発動時に需要家ごとに節電してほしい量を変化させる機能も持つ。この機能により、需要家が節電しすぎて施設内の環境が悪くなるといったトラブルを防げる。節電協力があまり得られず、需給逼迫を解消できないという事態も防げる。

 日本の各電力会社は電力需要に対応するために、火力発電設備の新設、増強を続けているが、三菱電機が新開発した技術が実用のものになれば、新設、増強にそれほどコストをかけずに済むようになるだろう。

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