発電に使えなかったダムの水を有効利用、東北電力が初の試み自然エネルギー

水力発電にはさまざまな可能性がある。その1つが水力発電用のダムの改造だ。これまで発電に用いていなかった水を利用できるよう、ダムの取水口のみ加工し、発電という意味では無駄に流れていた水を使う。

» 2013年05月15日 13時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 東北電力は、2013年5月13日、飯野発電所(福島市)の掘削工事を開始したと発表した。2014年2月の完成を予定する。飯野発電所は、隣接する蓬莱ダムを利用した小水力発電所だ(図1)。

 蓬莱ダムは戦前の1939年に完成した重力式ダム。土木学会が日本の近代土木遺産に指定した由緒あるダムだ。阿武隈川に付いており、高さ21.5m、幅133.3mのダム内部に最大380万m3の水を貯水できる。発電用ダムとして建設され、隣接する蓬莱発電所(最大出力3万8500kW)に水を供給している。

 図1の地図の左端には東北新幹線や東北自動車道が描かれている。

図1 飯野発電所の建設地点。出典:東北電力

 発電用ダムと発電所の組み合わせが完結している中、新たに飯野発電所を建設するとはどのような意味なのだろうか。

 蓬莱ダムは水力発電用とはいえ、阿武隈川の全ての流水をさえぎっているのではない。それでは景観が損なわれ、動植物を保護できない。流水を清潔に保つという理由もある。このような水を河川維持流量と呼ぶ。これを発電に使う。河川維持流量を発電に使う試みは東北電力としては初のものだという。

 掘削工事は、蓬莱ダム右岸に位置する既設の蓬莱発電所取水口設備を改造するために行う。ここから取水すると、有効落差9.48mの水を毎秒3.2m3利用できる。最大230kWの発電が可能だという。飯野発電所の出力は蓬莱発電所の約1%と少ない。だが、このような動きを広げることで、困難な水力発電所の新設を待たずして、電力供給の余力を高めることができる。

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