東北岩手で新規の地熱発電へ、7MWの発電が可能自然エネルギー

東北地方は地熱エネルギーが多い。岩手地熱は、岩手県八幡平市で既に見つかっている地熱資源へ向かって井戸を掘り、水蒸気を仮に得る調査を開始。2013年中に調査を終える。

» 2013年05月23日 13時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 坑井調査地点

 地熱発電所はさまざまな制約により、これまで新規の開発がほとんど進んでいなかった。日本は世界第3位の地熱資源国であるため、これは大きな損失だといえるだろう。

 日本の地熱発電所は東北地方と九州地方に集中している。なぜなら地熱エネルギー量が多いからだ。東北地方の中央部を青森、岩手*1)、山形、福島にまたがって地熱資源が分布している。

*1) 岩手県内では東北電力の松川発電所(岩手県八幡平市、出力2万3500kW)、葛根田発電所(岩手県雫石町、出力8万kW)が運転中である。

 岩手地熱*2)は、2013年5月、岩手県八幡平市で、地熱発電掘削調査を開始したと発表した(図1)。現場は国有林であるため制約が少ない。

*2) 日本重化学工業と地熱エンジニアリング、JFEエンジニアリングが出資して2011年に設立された企業。2013年5月には三井石油化学が新たに出資した。

 これまで、日本重化学工業と地熱エンジニアリング、JFEエンジニアリングの3社が八幡平市と協力して、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託により地熱開発促進調査を実施している。その結果、マグマ起源の貫入岩体による、250℃以上の地熱貯留層の存在を確認している。250℃は地熱発電に適する温度だ。

図2 掘削用リグの様子。出典:JFEエンジニアリング

 そこで、次の段階として岩手地熱が調査を進める。同社は2013年度中に坑井調査と仮噴気試験を行う計画だ。4月から1坑の坑井(図2)の掘削を開始しており、8月半ばに完了を予定する。その後、10月まで水蒸気についても調べる。

系統の課題が立ちふさがる

 地熱発電所の建設には時間がかかる。まずは地表調査、地質調査を重ね、地下の地熱資源を探査する。次に坑井(試験井戸)を堀る。それが終われば噴気調査だ。実際に水蒸気などが得られるかどうかを調べる。ここまでに5年程度を要し、岩手地熱はこの段階にいる。その後、発電計画や環境調査を終え、発電所の建設が終わるまで調査開始から10年を要する。

 通常は、発電計画の段階に至らなければ地熱発電所の出力は決まらない。ところが、今回の岩手地熱の計画は出力が7MW(7000kW)と明らかになっている。なぜだろうか。「現地の地熱エネルギーは7MW分を大きく上回る。しかし系統連系の制約から出力を7MW以上にできない」(JFEエンジニアリング)。再生可能エネルギーの利用拡大には、発電側だけではなく、送電側にも十分な計画と資本投入が必要だということが分かる。

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