卸電力の市場を今夏に一般開放、手数料なしで売買可能に法制度・規制

政府は今夏の電力需給が厳しくなる事態に備えて、卸電力の市場を開放する。電気事業者がスポットで電力を売買できる日本卸電力取引所の中に、新たに「夏季広域融通入札市場」を開設して、一般の企業でも余剰電力を売れるようにする。期間は6月3日〜9月30日である。

» 2013年05月27日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 日本卸電力取引所(略称JEPX)は電力会社や新電力などで構成する日本で唯一の電力取引市場である。通常は会員の電気事業者だけが取引できるが、電力需要が増大する夏の一定期間に限定して一般企業にも開放することが決まった。

図1 取引の流れ。出典:日本卸電力取引所

 JEPXの中に「夏季広域融通入札市場」と呼ぶ新しい市場を開設して、電力会社や新電力が需要のピークに合わせて必要な量の電力を事前に調達できるようにする。この新市場で電力を売買できる期間は6月3日(月)〜9月30日(月)の約3か月間に限る。

 取引の流れは次のようになる(図1)。電力を買いたい事業者は調達の条件をJEPXに伝えて、JEPXのウェブサイトに情報を公開する。その条件を見て電力を売りたい企業は入札の意向をJEPXに連絡する。JEPXは入札者の情報をまとめて買い手に提示し、買い手は条件の良いものから選んでいく。その後に売り手と買い手が売買契約を結んで取引を実施する。

 買い手からの調達情報には、時間帯やエリア、必要量などを記載する(図2)。上限価格を記載するかどうかは自由だ。実際に購入するかどうかが未定の場合でも、電力を購入する権利を確保することができる。確保するだけでも料金は発生する。

図2 購入情報の掲示内容例。出典:日本卸電力取引所

 一方の売り手側は入札にあたって、発電機の設置場所や送配電網との接続状況などをJEPXに伝える必要がある。入札する際の条件は柔軟に設定できて、時間帯別に価格を変えることも可能だ。通常のJEPXの取引では会費や手数料を支払う必要があるが、この新市場ではどちらも不要。

 JEPXは1年前の2012年6月に再生可能エネルギーの売買市場である「分散型・グリーン売電市場」を新設していて、今回の新市場の仕組みはほぼ同じである。ただし分散型・グリーン売電市場は月に1件程度の取引しかなく、活性化していないのが実情だ。

 夏季限定の新市場も同様の状況になる可能性は大いにある。実際に取引が活発に行われるとしたら、買い手は電力会社よりも新電力が多くなるだろう。電力市場の自由化を進める一歩として、6月3日からの取引の状況に注目したい。

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