電力会社9社で1兆5951億円の損失、沖縄だけが黒字法制度・規制

2012年度に電力会社9社は膨大な赤字を計上して、損失額は合計で1兆5951億円にのぼった。最悪は東京電力の6943億円で、次いで関西電力と九州電力が3000億円前後の損失に陥った。損失額が最も小さかったのは、意外にも電気料金が一番安い北陸電力である。

» 2013年08月05日 17時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 資源エネルギー庁が公表した2012年度の電力会社の部門別損益を見ると、2つの傾向が表れている(図1)。第1に電気料金が自由化されている企業向けの「特定規模需要部門」の損失が大きい点だ。家庭向けを中心に規制が続く「一般需要部門」の損失の2倍以上になっている。新電力との競争によって、企業や自治体向けに値引きが進んでいる状況がうかがえる。

図1 電力会社10社の2012年度の部門別損益。出典:資源エネルギー庁

 第2に注目すべき点は、電気料金が最も安い北陸電力の損失額が小さいことである。北陸の次に電気料金が安い中部電力も、事業規模が大きい割に損失額が少ない。両社ともに電気料金を値上げする予定もなく、他の電力会社と比べて経営効率が良いと考えられる。

 一方で電気料金が全国で最も高い沖縄電力だけは黒字を計上した。原子力発電所を持たないことが利益を出せる大きな要因で、それで経営が成り立ち、利用者の不満もないのであれば、望ましい状況である。

 もはや電力の販売量が増えることは期待できず、むしろ再生可能エネルギーの増加によって販売量は減少していくことが予想される。毎年の売上が減っていけば、たとえ原子力発電所を再稼働して燃料費を減らせたとしても、内部のコストを抜本的に削減しない限り、健全な経営状態に戻すことは難しい。いつまでも電気料金の値上げを続けることは不可能だ。

 2018年にも小売の全面自由化が予定されている。さらに2020年からは発送電分離によって競争状態が加速する。日本の電力市場の中核を担う電力会社の改革は待ったなしの状態にある。今こそ新しい経営の発想が求められていることを、各社の業績が示している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.