風力発電所が集まる秋田県の日本海沿岸で、新たに大規模な開発計画が始まる。海岸線に沿って12キロメートルの長さがある保安林に建設するもので、所有者の秋田県が発電事業者を公募して用地を貸し付ける。すぐ近くに海水浴場が広がり、地元住民の理解を得られるかが課題になる。
秋田県の日本海側は年間の平均風速が6メートル/秒を超える場所が多く、風力発電に適した地域である。その一角を占める潟上(かたがみ)市と秋田市にまたがる保安林で、新たに風力発電所を建設する計画が始まろうとしている(図1)。
秋田県が所有する防風・防砂用の保安林で長さは12キロメートル、広さは630万平方メートルにおよぶ(図2)。海岸線に沿って細長く延びていて、風車を建てれば海からの風を受けやすく、十分な発電量を期待できる立地である。
再生可能エネルギーを拡大するために秋田県が発電事業者を公募して、1万平方メートルあたり年額1万円程度で貸し付ける。12月27日まで申し込みを受け付け、2014年3月までに事業者を選ぶ予定だ。選定にあたっては県内の経済効果を最重視する。発電設備の規模などは公募の要件に入れていない。
建設予定地の長さから風車の設置数を想定すると、出力が2MW(メガワット)の規模で最大50基くらいまで可能である。一般に風車の設置間隔は、風向きに垂直に並べる場合には直径の3倍以上が必要とされている(図3)。用地を最大限に生かせば、100MWクラスの大規模な風力発電所を建設できる。
ただし問題になるのが周辺住民や動植物への影響だ。大型の風車は回転に伴って騒音や低周波音を発生することから、住民の健康を害する心配がある。秋田県の日本海側は渡り鳥の飛来地にもなっていて、自然保護団体からの反対も予想される。
さらに建設予定地の海側には海水浴場が広がっている。夏には数多くの海水浴客が訪れる場所で、風力発電所の建設にあたっては景観にも注意が必要だ。発電事業者が建設までに乗り越えなくてはならないハードルは多い。
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