スマートフォンやノートパソコンを買うと、付属品の中に「ACアダプタ」が入っている。電線を通ってオフィスや家庭に送られてくる電力は「交流(AC)」で、スマホやパソコンの中で使う電力は「直流(DC)」だから、アダプタが必要になる。2種類の電力は世界のどこでも使い分けている。
1970代のロックミュージックが好きな人ならば、「AC/DC」というバンド名と、ACとDCの間に電流が走るロゴマークは、おそらく記憶にあるだろう。演奏時の音量が掃除機のように大きいことから、掃除機に付いていたAC/DCのマークがバンド名の由来になったと言われている。
掃除機をはじめ大半の電気機器は「直流(DC=Direct Current)」の電力を使って動く。ところがオフィスでも家庭でも、コンセントから取り出せる電力は性質の異なる「交流(AC=Alternating Current)」になっている。
このために通常は交流から直流へ変換した電力を機器の内部で使う必要がある。スマートフォンのような携帯機器の場合は、変換用のアダプタを外付け方式にしている(図1)。
一方、太陽光発電システムに欠かせないパワーコンディショナは、ACアダプタとは逆に、直流から交流に変換するための装置である(図2)。太陽電池が発電した電力は直流の状態になっているためで、これをオフィスや家庭の電力線を通してコンセントまで送るために交流に変えなくてはならない。
日本だけではなく世界中のオフィスや家庭で直流と交流が混在している。両者の違いを簡単に説明すると、電力が同じ方向に一定の大きさで流れるのが直流で、周期的に大きさと方向が変わるのが交流である(図3)。一長一短があるため、用途に応じて両方を使い分ける。
それぞれの長所をひとつだけ挙げると、直流は電力の大きさを保ちやすく、逆に交流は大きさを変えやすい。貴重な電力を無駄なく使うためには直流が望ましいが、さまざまな大きさに変えて電力を使う必要がある場合には交流が適している。個々の電気機器は必要とする電力の大きさが違うため、各機器が共通に使うコンセントに届くまでは交流にしておいて、電気機器ごとに大きさを変えてから直流で効率よく消費する。
電力の大きさを変えやすい交流の特徴は、電力会社が運営する送電・配電ネットワークでも生かされている。発電所の電力は交流にして送電線へ送り出す。さらに各地域にある変電所で徐々に小さな電力に変えながら、オフィスや家庭まで配電する仕組みになっている。
連載第1回:電力を表す基本単位「kW」と「kWh」
連載第3回:電力の供給源は「発電」と「蓄電」
連載第4回:すべての利用者に電力を届ける「送電」と「配電」
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