ビル全体に直流で電力を供給、10%の節電に成功エネルギー管理

大成建設は、自社の研究拠点に直流の電力を供給するシステムを導入した結果、10%程度の節電効果を得られたことを明らかにした。交流と直流の変換回数を減らし、電力損失を抑えた結果だ。

» 2012年11月30日 11時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]
図1 大成建設技術センター

 直流の電力を供給するシステムを導入したのは、大成建設が横浜市戸塚区に保有する研究拠点「大成建設技術センター」だ。東芝と共同で実施している「スマートBEMS実証事業」の一環として2012年7月に導入した。

 電気を使う機器は、通常は交流の電力を受けて動作する。しかし、機器の内部では交流を直流に変換して電力を利用しており、変換時に電力を損失してしまう。

 太陽光発電システムや据え置き型蓄電池を利用する場合は、変換回数がさらに増える。太陽光発電パネルが出力する電力も直流だ。通常はパワー・コンディショナーで交流に変換して利用している。

 太陽光発電システムからの電力を蓄電池に充電する場合、多くの製品はパワー・コンディショナーが出力する交流の電力を蓄電池に供給する。しかし、蓄電池にためる電力も直流だ。蓄電池は内部で直流に変換して充電し、必要に応じて交流に変換して出力する。最悪の場合、太陽光発電パネルからの電力を、電気製品内部で消費するまでに直流/交流変換が4回必要になる。もちろん、変換するたびに電力を損失する。

 大成建設技術センターでは、直流の電力を供給するシステムに合わせて、太陽光発電パネルと据え置き型蓄電池も導入した。さらに、電力を消費する機器を改造して、直流電流を受けられるようにした。

 こうすれば、太陽光発電パネルから蓄電池を通って機器内部に届くまで1回も変換する必要がなくなる。電力会社からの電力で蓄電池を充電する場合も、交流を直流に1回変換するだけで済む。大成建設技術センターではLED照明などに直流電力を直接供給するようにしたところ、10%程度の節電効果を得られた。

図2 従来の給電方式と、直流給電方式の違い

 電力会社が供給する電力が交流である以上、いきなりすべてを直流給電にすることは難しいが、今後太陽光発電パネルや蓄電池といった、直流で電力を出力する機器を利用する機会は増える。直流の電力をそのまま利用できる機器も、少しずつ増えてくるだろう。

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