マンションの電気料金を約27%低減、太陽光など4つの技術を生かすスマートハウス

大京は節電と電気料金削減に役立つ4つの技術を盛り込んだマンションを作り上げた。見える化と高圧一括受電に加えて太陽光発電システムを組み込む。さらに冷房負荷を引き下げる外気利用手法も取り入れた。

» 2014年01月20日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 東京都東村山市とマンションの位置

 大京は屋上部に太陽光発電システムを導入したマンション「ライオンズ久米川駅前」(東京都東村山市)を立ち上げる(図1)。売電により各戸の占有部に掛かる電気料金を割り引くことが狙いだ。太陽光発電システムの出力は20.24kW、想定年間発電量は1万9011kWh。

 「マンションは1つ1つ規模や仕様が異なり、省エネや節電に向く設備が違ってくる。当社はこれまで高圧一括受電やMEMS(マンション向けエネルギー管理システム)などを導入してきた*1)。今回はライオンズマンションとして初めて太陽光発電システムの全量買電サービスの導入に踏み切った」(大京)。

*1) 2011年から一部の既築・新築のライオンズマンションに高圧一括受電の導入を開始し、2013年6月から高圧一括受電を導入した新築のライオンズマンションのうち、首都圏と関西エリアにあり、総戸数が50戸以上のものにMEMSとスマートメーターの標準採用を開始している。この結果、約15%の電気料金の節減が可能になったという。

電力関連の3つの技術と熱を考えた1つの技術を組み合わせた

 ライオンズ久米川駅前に組み込んだ設備のうち、消費電力の低減に役立つ技術は4つある。「MEMS」「高圧一括受電」「太陽光発電システム」「新・パッシブデザインだ」。

 このうち3つについては具体的な数値を挙げた。まず、MEMSを導入することで各住戸の消費電力を見える化でき、これによって電気の使用量を約10%低減できる。次に高圧一括受電により約5%電気料金が下がり、太陽光発電システムにより同じく約12%削減できる。これら3つの技術により、合計して約27%の電気料金削減が可能だと主張する。

 図2に3つの技術の効果(右下)と太陽光発電システムの全量売電サービスの枠組みを示した。一般的な全量売電では、全国10の電力会社に直接売電することがほとんどだ。大京の場合は新電力(PPS、特定規模電気事業者)のオリックス電力を経由する。「MEMS、高圧一括受電、太陽光の全量買電の3つのサービスは全てオリックスに依頼した」(大京)。

図2 太陽光発電システムの全量売電サービスの仕組みと、電気料金削減のモデル 出典:大京

 新・パッシブデザインは、ライオンズ久米川駅前に導入する4つ目の技術だ。遮熱と通気に工夫を凝らすことで冷房(排熱)に必要なエネルギーを減らし、間接的に電気料金を下げる取り組みである(図3)。「ライオンズ久米川駅前でどの程度効果があるのか、数値はまだ確定していない」(大京)。解析ソフトウェアを利用して一般的なモデル*2)をシミュレーション分析したところ、エアコンの使用量を約31%削減でき、6月から9月の4カ月分を合計して、電気料金換算で3390円の削減効果があることが分かったという。

*2) シミュレーションの条件は東京都庁付近に建設したマンションで、75.2m2の3LDKの南向きの住宅。室温27度、湿度60%以下を保つように3台のエアコンを運転した場合だという。PMV(Predicted Mean Vote、予測温冷感申告)と呼ばれる指標の値を±1.0以内とした。

図3 新・パッシブデザインの概要 出典:大京

 ライオンズ久米川駅前は地上15階建ての鉄筋コンクリート造(図4)。敷地面積は1169.84m2。総戸数は58戸。2014年3月に販売を開始し、2015年7月に完成を予定する。

図4 ライオンズ久米川駅前の完成パース予想図 出典:大京

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