卸電力市場の取引が増加、2013年度に全国の販売量の1%を超える電力供給サービス

小売の自由化で重要な役割を果たす「日本卸電力取引所」の取扱量が増えてきた。2013年度に国内で販売された電力の1.3%を占めて、2005年の取引開始から初めて1%を上回った。同様に新電力の販売シェアも0.7ポイント上昇して4.2%になったが、取引所からの調達量はさほど増えていない。

» 2014年07月09日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 「日本卸電力取引所(JEPX)」は国内で唯一の電力を売買できる市場だ。翌日分の電力を取引する「スポット市場」を中心に、直近の取引を扱う「時間前市場」のほか、特定期間を対象にした「先渡市場」で構成する。このうち取引量の大半を占めるのがスポット市場(先渡市場も含む)で、2013年度は前年度から1.4倍の103億kWhに増加した(図1)。

図1 卸電力市場の2013年度の取引状況。出典:資源エネルギー庁

 さらに時間前市場を加えると取引量は111億kWhを超えて、電力会社を中心とする全国の販売電力量(8760億kWh)の1.3%を占めるまでに拡大した。2012年度のシェアは0.9%で、2005年4月1日に取引所を開設してから初めて1%を突破したことになる。

 2013年度にスポット市場で取引が成立した約定量を見ると、売り手は電力会社(一般電気事業者)・新電力(特定規模電気事業者)・その他の事業者が3分の1ずつに分かれる(図2)。一方で買い手は電力会社が8割近くを占めていて、新電力の3倍以上の約定量がある。

図2 スポット市場の約定量(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 前年度からの伸び率も電力会社のほうが大きく、新電力が卸電力市場を十分に活用できていない状況が見てとれる。スポット市場の平均約定価格が1kWhあたり16.5円と高めに推移したことも1つの要因と考えられる。今後さらに取引量を増やすためには、入札対象の電力を拡大して約定価格を引き下げる必要がありそうだ。

 それでも新電力が全国で販売した電力量は2013年度に大幅に増えている。資源エネルギー庁の集計によると、2012年度の191億kWhから2013年度には227億kWhへ2割近く伸びた(図3)。自由化されている市場のシェアでは3.5%から4.2%に上昇した。増加した販売量の調達先を見ると、電力会社からの常時バックアップ(BU)が21億kWhと多く、JEPXからの購入量は1.9億kWhの増加にとどまっている。

図3 新電力のシェア(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 「常時バックアップ」は新電力の供給力が足りない分を電力会社が補完するもので、新電力は契約に基づいて電力会社に基本料金と従量料金を支払って供給を受けている。電力システム改革の一環で2013年度から料金体系の見直しが進み、電力会社は基本料金を引き上げて従量料金を引き下げた。

 この結果、新電力は常時バックアップを利用して販売量を増やしやすくなった。2013年度に新電力が販売した電力の26%は常時バックアップによるものだ(図4)。しかし電力会社が新電力を支援する常時バックアップは、小売の全面自由化に伴って廃止すべき契約形態と言える。本来は卸電力市場に移行することが望ましく、市場の活性化に向けた実効性のある対策を2016年までに実施する必要がある。

図4 新電力の調達構造(2013年度)。出典:資源エネルギー庁

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