サムスンと組んで国内を制覇か、太陽光発電所+大容量蓄電池蓄電・発電機器(2/2 ページ)

» 2014年08月14日 07時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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蓄電池を導入して発電事業が成り立つのか

 多くの大規模太陽光発電所の初期コストは、1MW当たりおよそ3億円だ。1日当たり4kWh/m2という日照条件であれば、変換効率15%の多結晶シリコン太陽電池モジュールを利用すると、年間3500万円程度の売電収入が得られる。従って、初期コストが1億円増えると、投資回収期間がおよそ3年延びてしまう。

 「当社は徳之島で出力2MWの太陽光発電所と容量1MWhの大容量リチウムイオン蓄電池を組み合わせて7億円規模で構築する*2)。実は7億円規模で抑えないと顧客の期待するIRR(内部利益率)を出すことができない」(エジソンパワー)。

 「低価格」に抑えることができた理由として、同社は2つの理由を挙げた。1つは徳之島の事例では同社が設計・調達・建設(EPC)事業者として取り組むことだ。導入期間全体にわたってコストを管理しやすい。もう1つは韓国サムスンSDI(Samsung SDI)と合意書を取り交わしていることだ。

*2) 一般的なメガソーラーの初期コストから計算すると、1kWh当たり10万円で大容量リチウムイオン蓄電池を導入できる計算になる。

サムスンと組んで全国を制覇

 合意書は日本市場で大型リチウムイオン蓄電池を大規模に普及させる業務に関するもの。「電池の供給に関する合意書だ。主に出力1MWや2MWという大型の蓄電池を対象としているものの、数kWのものも一部対象となる」(同社)。

 サムスンSDIとの合意書にはもう1つの意味があるのだという。長期間の保証だ。「大規模太陽光発電所は(固定価格買取制度を利用できる)20年という長期間にわたって運転が続く。当然、蓄電池も20年間利用できなければならない。事業者はもちろん、資金を融資する金融機関が20年という蓄電池の利用期間を求めてくる。しかし、これまで大容量蓄電池においては10年を大きく超える期間を保証した事例はほとんどない。今回は20年の保証をはっきりうたった初の事例ではないか」(エジソンパワー)。

 「電池は設置してからが勝負だと考えている。当社が蓄電池を監視し、メンテナンスを施していく。特に温度管理や過充電・過放電の監視が重要だ。不具合が生じた場合は、セル単位の交換はもちろん、複数のセルをまとめたラック単位の交換を施すことで性能を維持する」(同社)。これは電池の供給元であるサムスンSDIの協力がなければ継続が難しい事業だ。

 エジソンパワーはEPCと合意書という強みを今後も生かしていくという。徳之島の事例のように、大容量リチウムイオン蓄電池と組み合わせた大規模太陽光発電所を今後5年間に全国で20カ所建設する計画だ。このような規模の計画を国内で打ち出した企業は、これまでにない。

どのような蓄電池なのか

 エジソンパワーが徳之島に納入するのは出力2MW、容量1MWhという大型のリチウムイオン蓄電池。コンテナに蓄電池システム一式を収めてあり、設置しやすく、用途に応じて出力や容量、構成を調整しやすい(図3)。

図3 クレーンを用いて蓄電池システム全体を格納したコンテナを設置する 出典:エジソンパワー

 「図3と図4は2014年3月に当社の木更津工場(千葉県木更津市、かずさアカデミアパーク内)完成後、20フィートコンテナ(長さ6.06m)を利用した大容量蓄電池『EP-ESSシリーズ』を導入したときの様子だ。徳之島に納入する蓄電池でも20フィートコンテナを使うことを検討している」(エジソンパワー)。木更津工場の蓄電池(100kW、84kWh)は工場の屋根に設置した太陽電池モジュール(100kW)から得た電力を蓄えるためのもの。その後、工場の隣接地に出力2MWの太陽光発電所を設置し、2014年7月には売電事業を開始している。

図4 20フィートコンテナに格納した大容量リチウムイオン蓄電池システム 出典:エジソンパワー

 同社が納入する蓄電池の工夫は2つあるという。1つはリチウムイオン蓄電池セルを並列接続することで容量を拡大しやすくしていること。木更津工場に導入したシステムでは、84kWhという容量を60Ah×96直列×4並列(355V)という構成で実現している。サムスンSDIのリチウムイオン蓄電池セルは正極材料としてマンガン酸リチウムを利用しており、蓄電池の寿命は6000サイクル。

 もう1つは50kW出力の双方向パワーコンディショナー(直流交流変換器)をコンテナ内に組み込んだことだという。木更津工場では50kVA対応の双方向パワーコンディショナーを2組使っている。

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