日本では欧州の先進国から10年以上も遅れて固定価格買取制度がスタートした。開始から1年半で100万件を超える発電設備が認定を受けて、約7000万kWの規模に達している(図5)。制度を開始する前の時点では約2000万kWにとどまっていたことから、すべての発電設備が運転を開始すれば一気に4倍以上の規模に拡大する。
ただし他の先進国と比べると、太陽光発電に偏り過ぎている。全体の95%以上を太陽光発電が占めていて、海外で多い風力発電は2%にも満たない。風力や地熱発電は設備の運転を開始するまでの開発期間が長くかかることも理由の1つだが、最大の要因は買取価格の格差にある。
太陽光発電の買取価格は出力が10kW以上の非住宅用では電力1kWhあたり40円(税抜き)に設定された。その後は年に4円ずつ減額してきたものの、2014年度でも風力や地熱、中小水力などと比較して高めだ。それぞれの再生可能エネルギーで出力が大きい設備の買取価格を比較すると、太陽光は32円、風力は22円、地熱は26円、中小水力は24円である(図6)。
今後さらに太陽光発電の買取価格は下がって、他の再生可能エネルギーと同等の20円台半ばになる可能性が大きい。一方で2014年度から洋上風力発電の買取価格が35円に設定されたことにより、全国の近海で開発プロジェクトが活発になってきた。すでに欧州の先進国では洋上風力による発電設備が広がっている。周囲を海に囲まれている日本でも将来の再生可能エネルギーとして期待がかかる。
固定価格買取制度の対象になる発電設備が拡大するのに伴って、電力の買取金額も大幅に増えてきた。電力会社などが買い取った金額のうち、通常の火力などで発電した場合の平均的なコストを差し引いた分は「賦課金」として電気料金に上乗せする仕組みになっている。
2014年度の賦課金は総額で約6500億円にのぼる(図7)。2013年度と比べて、ほぼ倍増だ。標準的な家庭で年間に約2700円、月間に225円程度の負担が増える。今後も買取の対象になる発電設備が拡大して、賦課金は確実に増えていく。この負担額を過大と見るか、妥当と見るかで、今後の日本のエネルギー政策は変わってくる。
水力を含めて再生可能エネルギーはCO2を排出することなく、原子力のように放射能を放出する危険もない。固定価格買取制度の賦課金は、地球温暖化と放射能汚染の双方を防止するためのコストと考えるべきである。どのくらいの負担額までを許容するのか、国民の見識が問われるところだ。
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