開発に弾みがつく中小水力発電、2020年度に60万世帯分を超える電力に自然エネルギー

水力発電を導入可能な場所は全国で2万カ所を超えると言われる。固定価格買取制度が始まってから各地で開発プロジェクトが広がり、2020年度までに合計40万kW以上の発電設備が運転を開始する見込みだ。中小水力は太陽光や風力と比べて発電効率が高く、安定した電源として利用できる。

» 2014年09月25日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 小水力発電を推進する任意団体の全国小水力利用推進協議会が、政府に提出したレポートの中で2020年度までの導入予測をまとめた。すでに固定価格買取制度の認定を受けた中小水力発電設備(出力3万kW未満)と新規に認定を受ける発電設備(同5000kW未満)を加えて、2020年度には発電能力が合計で42万kWに拡大することを見込んでいる(図1)。

図1 固定価格買取制度による中小水力発電の新規導入量予測(認定済案件は2014年4月末時点。新規認定分は出力5000kW未満)。出典:全国小水力利用推進協議会(資源エネルギー庁のデータをもとに作成)

 中小水力発電の設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を標準の60%で計算すると、年間の発電量は22億5000万kWhに達する。一般家庭で62万世帯分にのぼる電力使用量に相当する規模になる。しかも予測の中には出力が5000kW以上で2014年5月以降に認定を受ける発電設備は含めていないため、さらに拡大の余地がある。

 水力発電は電力会社などが運転する出力3万kW以上の「大水力」と、自治体や一般企業による3万kW未満の「中小水力」に二分することができる。2012年度末までに運転を開始した水力発電のうち、中小水力は設備数で全体の91%、年間の発電量でも51%を占めて大水力を上回った(図2)。

図2 出力階級別の水力発電の導入量(2013年3月末)。出典:全国小水力利用推進協議会(資源エネルギー庁のデータをもとに作成)

 新規で開発可能な水力発電の候補地も圧倒的に中小水力向けが多い。発電量に換算して87%は中小水力がもたらす。出力別では1000〜3000kWクラスが中心になる。さらに砂防ダムなどの開発可能量を推定した分を加えると、中小水力発電による電力量は491億kWhまで拡大できる可能性がある(図3)。実に1300万世帯を超える膨大な潜在量を秘めている。

図3 出力階級別の水力発電の開発可能量(2013年3月末)。NEF:新エネルギー財団、JAPIC:日本プロジェクト産業協議会。出典:全国小水力利用推進協議会(資源エネルギー庁などのデータをもとに作成)

 特に最近になって砂防ダムや農業用水路を活用した中小水力発電の開発プロジェクトが全国各地で増えてきた。砂防ダムは防災用で、農業用水路はかんがい用に造られた設備のため、いずれも発電に使われるケースは少なかった。固定価格買取制度が始まったことで発電事業の採算性を見込みやすくなり、ダムや用水路の維持管理費を軽減する目的で自治体などが相次いで発電設備の導入に乗り出している(図4)。

図4 岐阜県の農業用水路に建設した「加子母(かしも)清流発電所」。出典:岐阜県農政部

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