琵琶湖の南にメガソーラー40カ所、市民共同発電の勢いも加速エネルギー列島2014年版(25)滋賀

全国の自治体の中で原子力災害対策に最も力を入れているのが滋賀県である。再生可能エネルギーの導入にも取り組み、災害に強い分散型の電力供給体制を拡大中だ。平坦な土地が広がる琵琶湖の南側を中心に、地元の企業によるメガソーラーや市民共同出資の太陽光発電所が急速に広がってきた。

» 2014年09月30日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 滋賀県の北部は福井県に近く、最寄りの原子力発電所から10キロメートル余りの距離にある。そのため県民のあいだでは災害の発生に対する不安が大きい。2013年11月に県が実施した調査でも6割の県民が「日常において原子力災害の発生を気にしている」と回答した。災害対策として北部を中心に放射線量を測定するモニタリングポストを設置する一方、企業や市民が率先して再生可能エネルギーの導入に取り組んでいる。

 2014年8月までに稼働したメガソーラーは29カ所にのぼり、さらに工事・計画中を加えると48カ所に拡大する(図1)。いずれも2013年以降に運転を開始した新しい発電設備ばかりだ。大半は琵琶湖の南側に広がる平野部に集まっていて、県内に本社や事業所を構える企業のプロジェクトが圧倒的に多い。

図1 滋賀県内のメガソーラー導入状況(2014年8月31日時点。画像をクリックすると拡大)。出典:滋賀県商工観光労働部

 とりわけ規模の大きいメガソーラーの工事が琵琶湖の中で始まっている。場所は下水浄化センターを新設するために県が埋め立てた「矢橋帰帆島(やばせきはんとう)」にある。島の南側で以前はパークゴルフ場があった約10万平方メートルの平坦な土地を活用する(図2)。

 滋賀県内で3つの工場を運営する京セラグループが県から土地を借り受けて、合計3万4000枚の太陽光パネルを設置する計画だ。発電能力は滋賀県で最大の8.3MW(メガワット)になる。年間の発電量は850万kWhを見込んでいて、一般家庭で2300世帯分に相当する。運転開始は2015年9月を予定している。

図2 「矢橋帰帆島」のメガソーラー建設予定地。出典:京セラ

 現在すでに稼働中のメガソーラーでは、ファクトリーオートメーションのダイフクが滋賀事業所の敷地内に建設した「ダイフク滋賀メガソーラー」の規模が最も大きい(図3)。発電能力4.4MWで2013年11月に運転を開始した。年間の発電量は430万kWhを想定している。一般家庭で1200世帯分の電力を供給することができる。

図3 ダイフクの滋賀事業所(左)と「ダイフク滋賀メガソーラー」(右)の全景。出典:ダイフク

 このほかにも村田製作所や積水化学工業、ブリヂストンといった大手の製造業が滋賀県内の工場でメガソーラーを稼働させている。地元の企業では創業90年の建設会社をはじめ、広い土地を所有する不動産・運輸・鉄道関連の会社が続々とメガソーラーを建設して発電事業に参入した。

 太陽光発電を導入する動きは市民のあいだでも活発だ(図4)。全国に先駆けて1997年に市民の共同出資による太陽光発電プロジェクトが南部の湖南市で始まり、その後も着実に発電所の数が増え続けている。特に2013年には県内8カ所で市民共同発電所が運転を開始した。

図4 滋賀県内の主な市民共同発電所(2014年9月5日時点)。出典:滋賀県商工観光労働部

 発電能力は10〜30kW程度の小規模のものが多いが、中には100kWを超えるミドルソーラー級の発電設備もある。太陽光パネルの設置場所は保育園や福祉施設、地元企業の倉庫の屋根などを活用する。

 市民共同発電所の多くは、1口が10〜20万円の個人を中心にした出資で成り立っている。売電収入に基づく配当を地域の商品券で還元したり、事業の収益を福祉に生かしたりする方法で地域の活性化にも役立てる。

 滋賀県は内陸にあって平坦な土地が多く、大規模な火力発電所や水力発電所は建設しにくい。地域の電力は太陽光発電を中心に再生可能エネルギーで確保する必要がある。まだ他県と比べて導入量は多くないものの、バイオマスや小水力発電を導入するプロジェクトも徐々に広がってきた(図5)。災害に強い電力供給体制を構築する取り組みは地域ぐるみで続いていく。

図5 固定価格買取制度の認定設備(2013年12月末時点)

*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −関西編Part1−」をダウンロード

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