デマンドレスポンスを自動化、横浜市のオフィス・店舗・家庭がシステムで連携

電力の需給状況が厳しくなった時に実施する「デマンドレスポンス」を自動化する取り組みが進んできた。横浜市にあるオフィスビルと店舗・家庭の合計25カ所をつないで、デマンドレスポンスの要請から実行・実施報告までを自動化する日本初の実証試験が10月中に始まる。

» 2014年10月07日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 「自動デマンドレスポンス(ADR)」を実施するためのシステムは国際標準規格になっていて、最新版は「OpenADR2.0 Profile b」である。京セラ、日本IBM、東急コミュニティーの3社が共同で、「OpenADR2.0 Profile b」を利用した実証試験を横浜市内で10月中に開始する。

 この実証試験では電力の需給状況が厳しくなった時に電力会社から発信するデマンドレスポンスの要請(DR信号)を受けて、対象になる家庭やビル・店舗などのエネルギー管理システム(EMS)と自動的に連携して需要を抑制する仕組みだ(図1)。さらに抑制できた電力の結果を集計して、電力会社にレポートを送るところまでを自動的に処理することができる。

図1 自動デマンドレスポンス(ADR)の実証試験の概要。出典:京セラ、日本IBM、東急コミュニティー

 実証試験の場所はオフィスビルが横浜市の郊外にある京セラの横浜事業所(都筑区)で、ほかに9カ所の商業施設と15カ所の一般住宅が参加する。合計25カ所を結んで、2015年3月まで約6カ月間にわたってADRの実証試験を実施する予定だ。

 通常のデマンドレスポンスでは電話やメールで節電を要請して、それに応じて企業や家庭が自主的に電気機器の使用を制限して需要を抑制する。ADRになると対象の企業や家庭の電力使用量をリアルタイムに算出しながら、企業や家庭は手間をかけずに需要を抑制して電力会社からインセンティブを受けることが可能になる。

 京セラなど3社はデマンドレスポンスを仲介するアグリゲータの市場を拡大するために実証試験に取り組む。京セラがADRの設計・運用を担当する一方、日本IBMはサーバーをはじめとする実行環境を提供する。東急コミュニティーは住宅や店舗にシステムを展開してADRの効果を検証する役割を担う。

 国内では早稲田大学が中心になってADRの普及を図るプロジェクトを展開している。早稲田大学が東京都内に設置した「EMS新宿実証センター」から全国各地の試験サイトにDR信号を送信して、通信結果やADRの実行状況を検証することができる(図2)。京セラなどが横浜市で実施する実証試験も早稲田大学のセンターと連携して進める。

図2 早稲田大学を中心としたADR実証実験の全体像。出典:早稲田大学

 2016年4月から始まる電力小売の全面自由化では、発電事業者と小売事業者が需給バランスの調整に協力する役割は大きくなる。ADRを使って需給バランスを調整できるようになると、計画外の電力調達が不要になってコスト削減にもつながる。電力市場の自由競争を促進するうえでADRに対する期待が高まっている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.