運転開始から29年の小水力発電所、ESCO方式で初期投資なしに設備更新自然エネルギー

山形県を流れる最上川を利用した農業用水路で、1985年から小水力発電所が運転を続けてきた。86メートルの落差を生かして1374kWの発電能力がある。稼働から29年を経過した設備を更新するためにESCO方式の事業スキームを導入する。新しい発電設備は2017年4月に運転を開始する予定だ。

» 2014年10月08日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 山形市の中心部から3キロメートルほどのところに「最上川中流小水力南館発電所」がある(図1)。古くから水不足に悩まされてきた山形盆地に、最上川の豊富な水を取り入れるために農業用水路が造られた。その水流を生かした小水力発電所が、今から29年前の1985年に運転を開始した。

図1 「最上川中流小水力南館発電所」の外観(中央の建物が発電所)。出典:最上川中流土地改良区

 老朽化した設備を更新するために、用水路と発電所を管理する最上川中流土地改良区はESCO(Energy Service Company)方式を採用することにした。ESCO方式はリース会社などが事業者になって資金調達から建設・運営までを担当する仕組みで、発電量や節電量を保証する点が特徴だ。発電所の所有者は初期投資なしに設備を導入することができて、売電収入とESCO手数料の差額から安定した収益を上げることができる。

 最上川中流小水力南館発電所の設備更新にあたっては、土地改良区が設立した「山形発電」が東北電力と売電契約を締結する一方、リース会社など3社が共同でESCO事業者になって地元の山形銀行から資金を調達する。発電設備の設計・工事やメンテナンスもESCO事業者が専門会社に委託するスキームである(図2)。

図2 発電事業のスキーム。出典:日本ファシリティ・ソリューションほか

 ESCO事業の中核を担うのは日本ファシリティ・ソリューションで、東京電力など4社が2000年に設立した。これまでにビルの省エネ設備の導入を主体に100件以上のESCO事業を手がけた実績がある。今後は小水力をはじめ再生可能エネルギーによる発電設備のESCO事業も拡大していく。

 最上川中流小水力南館発電所は農業用水路の取水ダムから水を取り込み、長さ6.6キロメートルに及ぶ水圧管路を通して、落差86メートルの水流を発電機に送り込む構造になっている(図3)。発電能力は1374kWで、農業用水を活用した小水力発電としては規模が大きい。更新後の発電設備は2017年4月に運転を開始する予定だ。

図3 現在の水車発電機。出典:最上川中流土地改良区

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