米国で進む火力発電の「リパワリング」、石油・石炭からガスコンバインドへ電力供給サービス

トヨタグループの豊田通商が米国内で火力発電所の設備更新計画に参画する。老朽化した石油・石炭火力発電設備を最新鋭のガスコンバインドサイクル方式へ転換して、発電コストとCO2排出量を低減する取り組みだ。米国では温暖化対策として火力発電所の「リパワリング」が活発になっている。

» 2015年01月21日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 豊田通商が参画するプロジェクトは米国東海岸のマサチューセッツ州にある「セーラムハーバー(Salem Harbor)発電所」の設備更新計画である。この火力発電所は1952年から1958年にかけて3基の石炭火力、続いて1972年に1基の石油火力による発電設備を運転開始して、4基の合計で74万5000kWの電力を供給してきた(図1)。

図1 現在の「セーラムハーバー発電所」の全景。出典:ISO New England

 すでに石炭火力発電設備は運転開始から50年以上を経過したため、石油火力を含めて全面的に更新する計画だ。新たに導入する発電設備は天然ガスを燃料に使う最新鋭のコンバインドサイクル方式で、発電能力は2基の合計で70万kWを発揮する。2015年内に建設を開始して、2017年に商業運転を予定している(図2)。

図2 リパワリングを実施する「セーラムハーバー発電所」の所在地と完成イメージ。出典:豊田通商

 米国では温暖化対策の一環で、老朽化した石油・石炭火力発電設備を高効率のガス火力に転換する「リパワリング(repowering)」が進んできた。セーラムハーバー発電所が立地する東海岸のニューイングランド地域では非営利の「ISO New England」が送配電事業者として、地域の火力発電設備の更新計画を後押ししている。

 ISO社によると、ニューイングランド地域の6つの州で稼働する発電設備の電源構成は2000年から2012年のあいだに大きく変化した。石油火力が34%から22%に減る一方、天然ガス火力が18%から43%へ急増している(図3)。セーラムハーバーの設備更新計画も地域の電源構成の変化に合わせた取り組みである。

図3 ニューイングランド地域6州の電源構成。上から石油、原子力、天然ガス、石炭、水力と再生可能エネルギー、揚水。出典:ISO New England

 日本の電力中央研究所が2010年の時点で評価した電源別のCO2排出量では、電力1kWhあたりのCO2排出量は石炭火力が最大で、石油火力が2番目に多い(図4)。これに対してLNG(液化天然ガス)を燃料に使ったコンバインドサイクル(複合発電)では半分程度のCO2排出量に減る。日本国内でも火力発電によるCO2排出量の削減が求められているため、今後は米国と同様にリパワリングが活発になることは確実だ。

図4 電源別のCO2排出量(2010年評価)。出典:電力中央研究所

 豊田通商はトヨタグループの商社で、主力事業の1つとしてエネルギー分野に注力している。これまでに米国で2件の発電事業に参画した実績があり、今回で3件目になる。国内では東京電力と共同でユーラスエナジーホールディングスを設立して、太陽光と風力を中心に再生可能エネルギーによる発電事業を展開中だ。

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