ニューヨークの屋台で太陽光発電、天然ガスとハイブリッドでCO2を60%削減自然エネルギー

米国ニューヨーク市の名物である屋台が環境志向の店舗に進化していく。屋台の屋根に太陽光パネルを搭載して、天然ガスと組み合わせたハイブリッド発電システムで調理や冷蔵が可能になる。最新鋭の屋台500台を無償で提供する先行プログラムが5月11日に始まった。

» 2015年05月13日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 ニューヨーク市内では路上で食べ物を販売する屋台が8000台近く営業している。そのうちの6割以上はガソリンをはじめ石油を燃料に使った発電機で調理しているため、排気ガスが大気を汚染するほか、調理・販売するベンダーの人たちの健康にも悪影響を及ぼす。こうした屋台の環境問題を太陽光と天然ガスによるハイブリッド発電システムで解決する取り組みが動き出した(図1)。

図1 太陽光パネルを搭載した屋台の利用シーン。出典:MOVE Systems

 環境志向の屋台はニューヨーク市で2013年に創業したMOVE Systemsが開発した。「MRV100」と呼ぶ屋台の屋根には1枚の太陽光パネルを搭載して、太陽の向きに合わせて角度をつけることもできる(図2)。さらに天然ガスとバッテリーを組み合わせたハイブリッド発電システムを構成して、電力を安定供給することが可能になっている。この発電システムにはハイブリッド自動車の技術を応用した。

図2 「MRV100」の外観(左)と搭載するハイブリッド発電システム(右)。出典:MOVE Systems

 最新鋭の屋台のメリットは3つある。最も大きな効果は排気ガスを削減できることで、有害な窒素酸化物を95%、CO2などの温室効果ガスを60%削減することが可能だ。加えて従来の発電機が発生するチェーンソーのような騒音がハイブリッド車と同様の静かな音に変わる。このほかベンダーにとってはエネルギーコストの低減にもつながる。

図3 「MRV100」の構造。出典:MOVE Systems

 屋台には固定式のキッチンや流し台、冷蔵庫、POS(販売時点情報管理)システムまで装備することができる(図3)。1台の価格は1万5000〜2万5000ドル(日本円で180万〜300万円)程度になる予定だ。

 MOVE Systemsは発売に先がけて500台を無償で提供するパイロット・プログラムを5月11日に開始した。ニューヨーク市からMFV(Mobile Food Vendor)のライセンスを取得しているベンダーが対象になる。

 ニューヨーク市の屋台では1日に120万食も売られるほど人気が高い。エネルギーの将来動向を調査・分析する非営利団体の米Energy Visionによると、ニューヨーク市内の屋台がMRV100に置き換わって、さらに燃料の天然ガスに食品廃棄物などから生成したRNG(Renewable Natrural Gas、再生可能天然ガス)を利用すると、年間に400万ガロン(1500万リットル)のガソリンと2万トンのCO2排出量を削減できる見込みだ。

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