課題も多い再生エネの出力制御、東北地域で解決策を探す実証を開始蓄電・発電機器(1/2 ページ)

NEDOは風力発電設備などの再生可能エネルギーによる発電設備の出力制御システムの低コスト化を目指し、東北地域で新たな実証事業を開始する。開発した技術は実際の電力系統で検証を行い、再生可能エネルギーの連携拡大を目指す。

» 2015年06月30日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

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 風力や太陽光などの再生可能エネルギーを利用した発電設備は、天候により出力が大きく変動してしまう。電力系統にこうした発電設備を大量に接続する場合は、一時的に発電量を制御する技術が求められる。電力は需要と供給を常に一致させる同時同量が原則で、このバランスが崩れると大規模な停電などが発生する可能性があるからだ。

 2015年1月に行われた再生可能エネルギーの固定買取価格制度の省令改正では、今後新たに系統連系する風力および太陽光発電設備に対して、遠隔出力制御システムの導入が義務付けられた。しかしその通信方式の標準化や、発電事業者が設置する制御装置の規格化などは整備されていない状況にある。そこで新・エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)は、こうした遠隔出力制御システムの導入環境の整備に向けた新たなプロジェクトを開始する。

 これはNEDOが2014年度から取り組んでいる「電力系統出力変動対応技術研究開発技術」の一環となるもので、研究開発の主な対象となるのは風力発電設備の遠隔出力制御システムだ。伊藤忠テクノソリューションズ、通研電気工業、東北電力、東北大学の4者に事業を委託し、出力予測を高精度に予測するモニタリングシステム、出力制御装置の標準化および低コスト化に向けた研究開発など、遠隔出力制御システムの実現に求められる4つ研究開発テーマに取り組む(図1)。

今回のプロジェクトにおける4つの研究開発テーマの概要 出典:NEDO(クリックで拡大)

 このプロジェクトは得られた研究開発成果を実際の電力系統で利用し、その効果を検証するまでを目標としている。実施期間は2015〜2018年度の4年間の予定だ。以下では4つの研究開発テーマの詳細について紹介する。

出力制御に向けた出力予測・把握技術の行動化

 再生可能エネルギーによる発電設備の出力を最適に制御するためには、その出力を事前に高精度に予測できるかが1つのポイントとなる。1つ目の研究開発テーマでは、こうした出力の予測・把握技術の高度化に取り組む。担当するのは伊藤忠テクノソリューションズだ。

 具体的には東北地域における大小さまざまな規模の風力発電設備を選定し、発電出力のモニタリングシステムを構築する。同システムから取得したデータを利用して風力発電設備の出力変動状況を把握・分析し、時間/地域単位でのきめ細やかな出力制御を実現するための出力予測技術の高度化を目指す。なお東北地域の太陽光発電設備についても同様の取り組みを実施する。

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