太陽光発電は開発期間が短い、風力は5年で地熱は10年を超える再生可能エネルギーの普及を阻む壁(1)(3/3 ページ)

» 2015年07月06日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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小規模な発電設備は開発しやすい

 同様に木質バイオマス発電も地域ぐるみで実施して開発期間を短くすることが可能だ。地域の林業から燃料の木材を調達できれば、通常は4〜5年程度で運転を開始できる(図6)。バイオマス発電は火力発電に区分されるため、環境影響評価の対象になるのは発電能力が112.5MW以上の大規模な設備に限られている。木質バイオマスで100MWを超えるような発電設備は燃料の調達量を考えても日本国内では現実的ではない。

図6 木質バイオマス発電の開発プロセスと主な課題(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 対照的に風力発電と地熱発電は7.5MW以上で環境影響評価が必要になる。特に地熱発電の場合は事前の資源量の調査に5年ほどかかるのが標準的で、環境影響評価を加えると建設工事を開始するまでに10年近くかかる(図7)。その後に地下を掘削して、地熱をくみ上げるための生産井や発電後の熱水を地下に戻すための還元井を用意する必要がある。運転開始までの開発期間は11〜13年にも及ぶ。

図7 地熱発電の開発プロセスと主な課題(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 ただし小規模な地熱発電であれば、温泉用に掘削した生産井と還元井を共用することも可能で、環境影響評価も不要だ。この方法だと開発期間は2〜3年程度で済む。発電に利用した後の熱水を温泉施設に供給する方式にすれば、地熱資源が無駄にならずに温泉源が枯渇する心配もなくなる。

 再生可能エネルギーの発電設備を拡大する大きなメリットの1つは、地域に分散することによって災害に強い電力供給体制を構築できる点にある。エネルギーの地産地消を推進して、電力会社に依存しない地域社会を作り上げる道が開ける。

第2回:「太陽光発電の運転開始率は2割強、未着手の案件が過剰なルールを誘導」

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