日本初の燃料電池船が完成、船も水素でCO2フリーに自然エネルギー

日本初の水素で動く船が完成した。環境省の実証事業として戸田建設などが開発した燃料電池船で、長崎県五島市の椛島沖で2015年度末まで実証航行が行われる。再生可能エネルギーによる電力で生成した水素を利用して、CO2フリーな航行を実現する。

» 2015年08月10日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 政府が2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて水素社会の実現を掲げるなど、次世代エネルギーとして注目される水素。最近では燃料電池車などのイメージが強いが、日本初となる水素で走る燃料電池船が登場した(図1)。

 環境省の「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の一環となる「小型船舶の低炭素化(燃料電池)の技術開発・実証」として、戸田建設などの受託グループが開発した燃料電池船で、船名は「長吉丸」(英名:Ever fortune)。2015年8月5日に長崎県五島市の椛島沖で実証航行が披露された。

図1 燃料電池船「長吉丸」 出典:五島市

 長吉丸は全長12.5メートルの小型船だ。水素と燃料電池で発電し、その電力でスクリューを回すモーターを駆動する。約450リットルの水素タンクを搭載しており、1充填当たりの航行時間は2時間になるという。最高速度は約20ノット(時速約37キロメートル)だ。燃料電池船は欧州では開発が進んでいるが、日本では長吉丸が初になるという。

 長吉丸が披露された椛島沖は、国から次世代海洋エネルギーの開発実証海域に指定されており、現在、浮体式洋上風力発電の実証実験が進められている(関連記事)。長吉丸の航行にはこの風力発電実証の余剰電力で生成した水素を利用する。再生可能エネルギーで発電した水素を活用することで、CO2フリーな航行を実現する狙いだ。

 今回、長吉丸を開発した小型船舶の低炭素化(燃料電池)の技術開発・実証は、外洋での運行が可能な低炭素型小型船舶を製作し、漁船などへの水平展開を図ることを目的とした事業だ。環境省は2015年度末まで長吉丸の実証航行を行い、技術課題などの検証を進めるとしている。

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