都市部での風力発電は採算が取れるか、神奈川県が検証を開始自然エネルギー

神奈川県は県内都市部における再生可能エネルギーの導入拡大に向け、立地条件の制約が少ない小形の風力発電設備の普及に向けたプロジェクトを開始した。固定買取価格制度を活用して、都市部での小形風力発電事業の採算確保が可能かどうかを検証する狙いだ。

» 2015年08月13日 13時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 風力発電設備を設置する際には、騒音や生態系、景観などのさまざまな周辺環境に配慮する必要がある。出力1万kW(キロワット)上の設備を設置する際には、事前に「環境影響評価」を実施することが法律で義務付けられている(関連記事)。こうした出力の高い大型の設備の場合は周辺環境への影響が大きいため、山間部や海上などに設置される場合が多く、都市部に設置されることは少ない。

 そこで神奈川県は県内都市部における再生可能エネルギーの導入拡大に向け、立地条件の制約が少ない小形の風力発電設備の普及に向けたプロジェクトを開始する。固定買取価格制度の開始以降、都市部では太陽光発電設備の普及が進んでいる。加えて雨天・曇天時や夜間にも発電できる小形風力発電の普及を図ることで、再生可能エネルギーの導入をさらに促進する狙いだ(図1)。

図1 小形風力発電の導入事例。左は新潟県村上市、右は神奈川県横浜市のもの 出典:神奈川県

 導入プロジェクトはプロポーザル方式で募集を行う。対象となるのは法人格を有する団体(複数数事業者、共同企業体、特別目的会社などでも可)だ。プロジェクトの提案後、神奈川県の審査をクリアした団体には、小形風力発電設備の設置費用に補助率の3分の1を乗じた補助金が支給される。補助限度額は866万7000円だ。

 このプロジェクトの最終的な目的は、再生可能エネルギーの固定買取価格制度を活用して、小形風力発電事業の採算が確保が可能かどうかを検証することにある。現在の風力発電による電力の買取価格は、設備の出力が20kW以上の場合は1kWh(キロワット時)当たり22円だが、20kW未満の場合には倍以上の55円だ。今回は後者の20kW未満の買取価格を活用して事業運営の採算確保を目指す。神奈川県はその結果を公表することで、小形風力発電設備の普及につなげる狙いだ。

 なおプロジェクトの公募期間は2015年8月10〜同年9月9日まで。選考結果の公表は同年9月下旬を予定している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.