太陽光と風力と工場が集まる半島、電力の自給率300%を超えるエネルギー列島2015年版(23)愛知(3/3 ページ)

» 2015年09月24日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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全国有数の農業用水路で小水力発電

 愛知県では南部の太平洋沿岸を中心に豊富な日射量に恵まれている。住宅用の太陽光発電設備の導入量は全国のトップで、固定価格買取制度が始まって以降の新設分だけでも非住宅用と合わせて全国で3位の導入量がある(図7)。さらに風力発電のほかに小水力とバイオマスの導入プロジェクトが各地域に広がってきた。

図7 固定価格買取制度の認定設備(2014年12月末時点)

 県内には3本の大きな川が流れていて、その水量を利用して農業用水路が平野部を中心にはりめぐらされている(図8)。農業用水路には必ず落差があり、小水力発電を実施できる場所は数多く存在する。愛知県は2014年7月に「小水力発電マスタープラン」を策定して、県内各地の農業用水路に小水力発電の導入を推進している。

図8 愛知県内の主要な農業用水路。出典:愛知県農林水産部

 このマスタープランでは小水力発電の候補地166カ所を選び、それぞれの場所で可能な発電能力を算定した。166カ所を合わせると5MWを超える規模になり、小水力発電の標準的な設備利用率60%で計算すると年間の発電量は2700万kWhに達する。一般家庭で7500世帯分だ。

 すでに2013年から2014年にかけて6カ所で小水力発電所が運転を開始した。小水力の中では規模の大きい発電所の建設計画も内陸部の豊田市で始まっている。愛知県の中央を流れる矢作川に設けられた灌漑用の「羽布(はぶ)ダム」からの水流を利用する(図9)。

図9 「羽布ダム小水力発電所」の完成イメージ。出典:愛知県知事政策局

 ダムの直下に発電所を建設して、45メートルの落差を生かして発電する仕組みだ。最大で毎秒3立方メートルの水流を取り込んで、発電能力は854kWになる。年間の発電量は56万kWhを想定していて、設備利用率は74%と高い。運転開始は2016年度内を予定している。

 一方の都市部では大量に発生する生ごみを利用したバイオマス発電の取り組みが急速に進んできた。代表的な例は名古屋市の南側に隣接する大府市(おおぶし)のプロジェクトだ。周辺地域を含めて生ごみや食品廃棄物を集約して、微生物で発酵させてバイオガスを生成する(図10)。

図10 「横根バイオガス発電施設」の外観。出典:オオブユニティ

 1日あたり70トンの廃棄物からバイオガスを作り、625kWの電力を供給することができる。年間の発電量は500万kWhになり、1400世帯分をカバーする。2015年10月に運転を開始する予定である。バイオマス発電は再生可能エネルギーの中でも設備利用率が高く、この発電所では90%を超える見通しだ。

 ほかにも県内各地の廃棄物処理場や下水処理場で同様にバイオガスを使った発電所の建設計画が続々と始まっている。愛知県の再生可能エネルギーは沿岸部を中心に太陽光と風力が伸びて、内陸部では小水力とバイオマスが広がっていく。今後も拡大できる余地は十分に残っている。

*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −北陸・中部編 Part2−」をダウンロード

2016年版(23)愛知:「廃棄物から電力を作って農業に、池の上にも太陽光パネルが並ぶ」

2014年版(23)愛知:「太陽光の先進県がバイオマスで全国1位、木質から廃棄物まで燃料に」

2013年版(23)愛知:「太陽光発電で全国のトップを快走、加速するメガソーラー開発に風力や小水力も」

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