2016年4月から始める電力の小売全面自由化に向け、対応に迫られる電力事業者を対象としたサービスが続々と登場している。クラウドソーシングという人材事業を手掛けるベンチャー企業のクラウドワークスは、2015年5月から新事業として電力事業者向けの業務委託サービスを開始した。同社にその内容と狙いについて聞いた。
2016年4月から始まる電力の小売全面自由化に先立ち、2015年8月3日から経済産業省への「小売電気事業者」の登録受付が始まった。自由化に向けその数が一気に増えた新電力(特定規模電気事業者)も、新たに家庭向けの電力を販売するには小売電気事業者として登録する必要がある。
2015年1月からは家庭などの需要家が電力会社から別の事業者への契約変更手続が可能になるため、今後、登録手続きを完了した事業者の顧客獲得に向けた取り組みが本格的に動き出すだろう。
一方でこのように転機を迎える電力市場への対応を進める事業者をターゲットに、需給管理や顧客管理システムなどを扱うITベンダーなど、多くの企業が新たなビジネスチャンスとして注目している。こうしたチャンスを狙うのは大手企業だけでなく、ベンチャー企業も同様だ。
今回はクラウドソーシングというインターネットを活用した人材事業を中心に据えつつ、2015年度から新たに電力事業者向けのサービスを展開するベンチャー企業、クラウドワークスの取り組みを取材した。
クラウドワークスは2011年に創業したベンチャー企業。事業の中核となるのはクラウドソーシングという人材サービスだ。クラウドソーシングとは簡単にいえばインターネット上からさまざまな業務の受発注ができるサービスのこと(図1)。クラウドソーシングベンダーは、さまざまな業務能力を持った多くのメンバーを会員として保有し、企業や個人などの発注者と、この業務能力とを結び付ける役割を果たす。
発注企業側は、通常の外部委託契約に比べてもっと小さい単位で外部委託を行うことが可能になる利点を持つ。一方で受注する側も、仕事を行うのに制約がある場合でも場所や時間に合った受注が可能で、自由な働き方を取れることが魅力だ。クラウドソーシングの利用例としては、ロゴやWebサイトの制作、原稿の翻訳などさまざまなものがある。
同社は2014年11月に東証マザーズに上場。現在は約70万人以上のクラウドワーカー(登録会員)が利用しており、クラウドソーシングサービスを利用するクライアント企業は10万社を超えるという。
そして2015年5月から新規事業として開始し、電力事業者向けにも展開しているのが「クラウドワークスBPO」(以下、BPO)だ。BPOはビジネス・プロセス・アウトソーシングの略称で、クラウドワークスの社員が顧客企業に常駐して業務内容を整理し、業務のアウトソーシングが可能な組織体制の構築をサポートするというエンタープライズ向けのサービス。従来のインターネットを介してやりとりを進めるクラウドソーシングとは異なり、実際にクラウドワークスの社員が顧客企業の現場に入り業務改善を進める点が特徴となる。
2015年5月のBPO開始以降、新電力などの電力関連事業者に対して具体的にどんな取り組みを行っているのか、クラウドワークス エンタープライズ Div. アカウントプランニング部の部長を務める関根隆行氏に聞いた。
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