電力とガスの越境タッグが始動、東北電力と東京ガスの新会社:電力供給サービス
東北電力と東京ガスは、関東圏における電力小売事業を行う新会社「シナジアパワー」を設立した。まずは高圧・特別高圧向けで関東への電力販売を開始する。
電力会社とガス会社のタッグがいよいよ始動する。東北電力と東京ガスは2015年10月1日に電力小売事業を展開する新会社「シナジアパワー」を設立したことを発表した。
新会社シナジアパワーは、東京都台東区に本社を置き、設立時資本は9.9億円。同年7月30日に小売事業会社設立に合意してから準備を進めてきていた(関連記事)。
両社は、電力小売の全面自由化に向けそれぞれが持つ事業ノウハウと競争力のある電源、販売チャネルを活用していく方針。新会社を通じて、2016年4月から北関東を中心に関東圏の高圧・特別高圧向けで電力販売を行う。高圧・特別高圧などの企業・業務用途では、既に電力も都市ガスも小売は自由化されているため、セット販売などが可能となる(関連記事)。
電力小売の完全自由化に対しては、異業種の連携や越境参入に大きな注目が集まっている。異業種連携では、特に同じインフラ産業である電力とガスの組み合わせが注目されている。実際に電力システム改革小委員会による国民意識調査では「電気とガスや水道のセット販売による割引メニュー」に対し「興味がある」と「やや興味がある」の合計は56.4%に達している(図1)。
図1 興味があるセット販売やサービス(クリックで拡大)※出典:電力システム改革小委員会第6回制度設計WG「小売自由化に関する国民意識調査の結果概要について」
一方、越境参入については、特に最大の市場である関東圏の切り崩しに大きな注目が集まっている(図2)。
図2 自由化される電力市場規模と契約数(クリックで拡大)※出典:資源エネルギー庁資料から日本ユニシスが作成
- 東北電力と東京ガスが関東圏で電力小売、2016年4月に企業向けから開始
ついに電力会社とガス会社の提携が始まった。売上高で第4位の東北電力が都市ガス最大手の東京ガスと共同で新会社を設立して、東京電力の管内で電力の小売事業に乗り出す。北関東の3県を中心に企業向けの高圧・特別高圧の電力小売から開始する。都市ガスとセット割引も実施する見通しだ。
- ガスの小売全面自由化は2017年4月、電力とセット販売が可能に
電力と並行してガスの小売全面自由化を2017年4月に実施することが確実になった。政府の委員会がガス市場の改革案として示したもので、家庭を中心とする小口の利用者にも自由な料金設定でガスを販売できるようになる。ガス会社の導管事業の分離を含めて、電力と同様の市場開放が進む。
- LPガスの最大手も電力小売に、自由料金でセット販売を開始
「プロパンガス」で知られるLPガスの市場で最大手のアストモスエネルギーが電力の小売を開始した。東京電力の管内でLPガスを利用中の企業や自治体を中心にセット料金で販売する。LPガスの市場は自由化されているため、2016年4月から家庭向けでも電力とセット販売が可能になる。
- 小売自由化で求められる、新たな顧客サービスの仕組み
第1回では電力・ガスシステム改革の全般的な動向を説明した。今回からは「小売」「発電・送配電(設備管理)」「経営管理」の各業務にブレイクダウンして、必要な施策や海外の先進事例を取り上げる。日本でも電力とガスの小売自由化が進んでいく。自由化における小売ビジネスを考えてみる。
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