沖縄本島でバイオガス発電、下水から2300世帯分の電力を作ってCO2削減:自然エネルギー(2/2 ページ)
すでに発電設備の設計・施工が9月中旬から始まっている。運転開始の時期は発電規模の大きい宜野湾で2016年10月、具志川では同年4月の予定だ。下水の処理で発生するバイオガスを利用した電力は固定価格買取制度で1kWhあたり39円(税抜き)の買取価格が20年間にわたって保証される。2カ所の合計で年間に3億2000万円の売電収入になる。
浄化センターでは周辺地域から集めた下水を処理するために、汚泥部分を発酵させて容量を削減する方法が一般的にとられる。この処理によって「消化ガス」と呼ぶ生物由来のバイオガスが大量に発生する(図4)。
図4 宜野湾浄化センターの消化ガス発生量と用途(2013年度)。出典:沖縄県土木建築部
従来はガスの一部を燃焼して、発酵に必要な温水を作っていた。それでも余剰分が発生するために焼却処理が必要だった。バイオガス発電設備を導入すると、余剰分を発電に利用できるうえに、発電に伴う熱で発酵用の温水を作ることも可能になる。2カ所の浄化センターでは発電事業者から無償で温水の供給を受ける契約になっている。
沖縄県は公募を通じて発電事業者を選定した。宜野湾では東芝を中心とする連合体が設立した「かりゆしバイオマスパワー」が事業を担当する一方、具志川では水道設備や電気工事の専門企業4社による「NOSAバイオエナジー」が事業を推進していく。
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