リニアモーターカーに続く超電導の活用、鉄道総研の描く夢小寺信良のEnergy Future(3/6 ページ)

» 2015年11月20日 09時00分 公開
[小寺信良スマートジャパン]

鉄道総研が超電導のエキスパートである理由

―― 鉄道総研とは、鉄道に関するあらゆることを研究開発しているところなんですよね。そこがなぜ、超電導のエキスパートなんでしょうか?

高井氏 超電導の研究は非常にたくさんの人がやっておられます。やっぱりそれは、夢の技術なんですよね。極限まで温度を下げれば電気抵抗が全くなくなってしまうというので、応用分野としてはいろいろなものが考えられているんです。代表的なものが超電導磁石です。電気抵抗がなければ非常に強力な磁石が作れます。

 ただ実用というレベルになると、今実際に製品として使われているのはMRI(磁気共鳴画像)装置ぐらいですね。医療機器で、患者さんの体を断面で見ることができるというもので、あれが非常に強い磁力を使うんですね。その次に実用化に非常に近いといえるものが、リニアモーターカーですね。

photo 鉄道総研専務理事の高井秀之氏

―― リニアモーターカーは、1970年代から宮崎県に実験線を引いて研究が続けられてきました。筆者も小さい頃からニュースでよく見ていたのですが、これも超電導を使うんですか?

高井氏 超電導の技術は、リニアモーターカーには最初から導入されています。車体を磁気浮上させるには、常電導では弱く、やはり超電導を使わないとお客さんをたくさん乗せて走るようなものは難しい。東京〜大阪間を1時間で結ぶという目標を考えると、時速500キロメートルが必要になります。時速300キロメートルが鉄車輪の限界だといわれていましたから、いろんな選択肢があったのは確かですが、超電導磁気浮上方式は、初期の段階からずっと同じですね(図4)。

photo 図4 鉄道総研の敷地内にはかつてのリニアモーターカーの試験車両が設置されている

――そうはいっても1970年代の技術では、実現するのが大変だったのでは?

高井氏 最初の頃は技術開発がなかなか難しくて失敗の連続でした。宮崎実験線では当時世界最速の時速517キロメートルを達成するところまでやりました。

 超電導に関して、技術的な転換点となったのは「高温超電導」ですね。従来は超電導はマイナス270度近くまで冷やさなければ実現できませんでした。この温度を実現するには、液体ヘリウムを使わなければならなかったのですが、液体ヘリウムだと手に入れるのも扱うのも大変です。

 マイナス270度近辺まで冷やさなくても超電導現象を発生させられる高温超電導材料がいろいろと発見されて、現在はマイナス196度が沸点の液体窒素で超電導現象が起こせるようになりました。窒素であれば、普通の空気中に存在するので簡単に作り出すことができるので、実証のハードルが一気に下がってきたのです。さまざまな方向での活用の現実味が出てきたんですね。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.