リニアモーターカーに続く超電導の活用、鉄道総研の描く夢小寺信良のEnergy Future(5/6 ページ)

» 2015年11月20日 09時00分 公開
[小寺信良スマートジャパン]

自動切換えが可能な超電導ケーブルの利点

―― 送電網の全体からすれば、かなり短いようにも思えますが、それでも超電導ケーブルを使った方が効果があるんですか?

高井氏 例えば大都市圏の通勤線区で、あれだけの電車が走っていると、今張ってあるケーブルでは容量がギリギリで足りない部分が出てきます。それに変電所の容量もいっぱいなんですね。じゃあ変電所作ればって話なんですけど、都心に変電所を新たに作るのは大変な話です。

 そこの本当に厳しい所に超電導ケーブルを張ってやると、容量が無限大とは言いませんけど、非常に楽になるんですね。本来ならば変電所を一つ作って強化しなければならないようなところを省略できる。送電そのものの抵抗をなくすというよりも、ごく限られた地域の救済策みたいな効果を期待しているんです。

―― そもそも普通の送電線による損失は5%ぐらいだと言われています。超電導ケーブルを使うとそこがゼロになるわけですが、冷やすための電力で2%ぐらい使ってしまう。そうなると差し引き3%ぐらいがお得になるということのようですが。

高井氏 実際それぐらいなんですよ。ですから今ある電車用の送電線を全部超電導ケーブルにしようとは、考えていません。そこを狙っているんではなく、エネルギーの需給の厳しいところを置き換えてやると、回生が効くようになるんです。

―― 「回生」ですか?

高井氏 電車がブレーキをかけるとそれで発電して、他の電車が使う回生という仕組みが出来上がっています。ところが送電線に電気抵抗があると遠くまでうまく電気が戻っていかない。そういうところに超電導ケーブルがあると、回生効率がほぼ100%になります。回生ができないと、せっかく発電しても、これはもう熱として消費してしまうしかないんですね。

―― 超電導ケーブルは、一般の電力線でも同じような考え方で使えるんでしょうか?

高井氏 電力会社の方でも、当然検討はされています。ただ距離が長いということと、交流ですとまた違う問題があって、超電導ケーブルであってもだいぶロスが出るらしいんですね。そういうこともあって、今鉄道で使っている1500V直流、これが超電導ケーブルではたまたま使いやすい、うまい電圧なんですね。

―― 鉄道だからメリットが大きいと。

高井氏 超電導ケーブルがいいのはですね、今使ってる電線、これに並列でつないでやればいいんです。そうすると超電導ケーブルの方は抵抗がないから、電気は全部そっちを流れるんです。万一超電導ケーブルに何か起こって通電しなくなったら、何のスイッチもなくても従来のケーブルを流れる。これがあるから、現地試験としては割合安心してやれるんですね。何かあったらどうするんだっていうことに関しては、非常に安心感があるんです。

―― 一方で、課題は何でしょう?

高井氏 超電導ケーブルの最大の課題は、超低温の維持でしょうね。2km程度とは言いながら長大なものですし、屋外に置く設備ですし、列車の近くに置くと振動は大丈夫かとかですね。

 あとは、接続なんですよね。ケーブル自体、運搬や敷設のことを考えると、300メートルが一つの区切りになります。普通の電線でもそんなもんなんですが、あれは300メートルずつつないでいるんですね。超電導ケーブルはただ電線をつなぐんじゃなくて、冷凍設備の接続になります。当然そこからの熱の侵入も考えられます。これをどう上手に処理できるかですね。(図7)。

photo 図7 超電導ケーブルの末端部分。液体窒素を送り込んで冷却する(クリックで拡大)

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