電気料金は自由競争で安くなる、最高でも電力会社の規制料金に動き出す電力システム改革(49)(1/2 ページ)

家庭向けに電力を販売できる小売電気事業者が100社を超えて、料金とサービスの両面で活発な競争が始まる。電気料金は確実に安くなり、ガスや電話と組み合わせた割安のセット料金が全国に広がる見通しだ。競争が進まない地域では、需要家が電力会社の規制料金を選択することもできる。

» 2015年11月20日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第48回:「小売電気事業者は100社を超える、再生可能エネルギーの供給者が相次ぎ登録」

 小売全面自由化の最大の目的は電気料金の低減にある。これまで一般の家庭が利用する「電灯」の料金は、企業や自治体が購入する「電力」に比べて高かった(図1)。震災後には電力会社の燃料費が増加して電灯・電力ともに平均単価が上昇したが、2016年4月の小売全面自由化を機にメニューの拡大と料金水準の低下が始まる。

図1 電力会社の電気料金の推移。1kWh(キロワット時)あたりの平均単価。「電灯」は家庭・商店向け、「電力」は法人向け(画像をクリックすると1951年から表示)。出典:資源エネルギー庁

 現在の電力会社の料金メニューは大きく分けて2種類ある。1つは標準的な単価を設定した「供給約款」と呼ばれるもので、契約電力が50kW(キロワット)未満の低圧の場合には国の認可を受けなければ値上げすることができない。もう1つは条件によって割引を可能にした「選択約款」で、時間帯別のメニューが代表的だ(図2)。選択約款は国に届け出るだけで認可を受けずに開始できる。

図2 電力会社の低圧料金メニュー(東京電力の場合)。出典:資源エネルギー庁

 2016年4月以降は認可制の「供給約款」が「経過措置約款」として残る一方、届出制の「選択約款」は廃止して料金メニューを自由に設定できるように変わる(図3)。この変更に伴って、電力会社の小売部門は経過措置約款と自由料金メニューの2本立てで電力を販売する形になる。経過措置約款は2020年4月以降まで継続する予定だ。

図3 小売全面自由化に伴う料金規制撤廃の流れ(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 全面自由化にもかかわらず、国の認可が必要な規制料金を続けるのは、地域によって事業者間の競争が進まない場合を想定している。もし従来と変わらずに電力会社の小売部門だけが電力を販売する地域が残ったとしても、標準的な規制料金で電力を購入することができる。自由化によって電気料金が上昇することを防ぐための措置だ。

 2020年4月に発送電分離を実施すると、電力会社の発電・送配電・小売部門が独立の会社として運営する体制に変わる。その後は市場の競争状況を見ながら早期に経過措置約款を廃止する方針だ。全面自由化から4年が経過して、電力会社の収益も事業領域ごとに管理する状態になれば、現在の電力会社の小売部門は支配的な競争力を発揮しにくくなる。

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