管内2000万世帯は草刈り場か、東電が売りたい電力以外の価値電力供給サービス(1/3 ページ)

2016年4月から始まる電力小売全面自由化に対し、企業間競争が最も激しくなると見られているのが関東エリアである。東京電力が独占してきた関東電力市場だが、市場開放後は競合は真っ先にこの市場を狙う。東京電力は何を狙うのだろうか。

» 2016年01月08日 11時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 「最も魅力的な関東エリアは、電力小売全面自由化後最も競争が厳しい地域になると考えている」と語るのは、2015年1月7日の記者会見に登壇した東京電力 常務取締役でカスタマーサービス・カンパニー・プレジデントの小早川智明氏の最初の言葉である(新料金プランについてはこちらの記事を参照)。

 電力市場で国内最大である関東圏約2000万世帯に対し、東京電力はほぼ独占的に電力を販売してきた。契約口数の合計は2014年度末で電灯が2724万口、電力が198万口、合計2923万口に達している(図1)。

photo 図1 東京電力の契約口数(クリックで拡大)出典:東京電力

 しかし、電力小売全面自由化となれば、最も大きな市場であるからこそ、新規参入事業者が一番先に狙う地域となる。2015年末にいち早く料金プランを発表した東京ガスをはじめ、ほとんどの新規参入事業者が「東京電力価格」を基準に据え、安さや付加価値を訴求する状況になっている(関連連載:「電気料金の新プラン検証シリーズ」)。

統合エネルギーサービス企業への進化

 虎視眈眈と競合企業が市場の切り崩しを狙う中、東京電力は何を目指すのだろうか。

photo 東京電力 常務取締役でカスタマーサービス・カンパニー・プレジデントの小早川智明氏

 小早川氏は「“変化をチャンスに”を合言葉に、電力小売全面自由化を統合エネルギーサービス企業として進化するチャンスとしたい」と力を込める。

 電力の小売全面自由化が2016年4月に実施され、さらに2017年4月にはガスの小売全面自由化が始まる。電力会社が電力のみを売り、ガス会社がガスのみを売る時代は終わり、エネルギーを組み合わせて最適なエネルギー構成で最終顧客に提案していく時代に向かうというわけだ。

 「エネルギーを電力だけやガスだけで売る時代ではなくなる。さらに電力やガスだけでなく、幅広いサービスも組み合わせて提案していくことになるだろう。最も重要なのは顧客に選ばれる価値をどう作り出していくのかということだ」と小早川氏は述べる。

 さらに東京電力が最終顧客にもたらす価値について「経済的価値(お得)」「付加価値(安心・便利)」「利用価値(省エネ・快適)」の3つのポイントを挙げる。

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