長崎県内で固定価格買取制度の認定を受けた発電設備の規模を見ると、太陽光が圧倒的に多い(図9)。すべての認定設備が稼働すれば、長崎県の全世帯数の9割をカバーすることができる。海に囲まれた長崎県では沿岸部と内陸部の両方にメガソーラーが広がり、離島でも大規模な導入プロジェクトが進んできた。
新たに運転を開始したメガソーラーでは、長崎市内で2015年5月に完成した「長崎田手原(たではら)メガソーラー発電所」の規模が大きい。以前はゴルフ場だった地形を生かしながら太陽光パネルを設置した点が特徴だ(図10)。
スキャナーを使って地形を3次元で計測して、合計で5万枚のパネルに日影ができないようにコンピュータを使って配置した。発電能力は13MWに達する規模で、年間に1300万kWhの電力を供給することができる。一般家庭で3600世帯分になる。
建設中のメガソーラーでは、長崎空港の隣接地を利用した「SOL de 大村 箕島(みしま)太陽光発電所」が注目を集める。海に浮かぶ人工島の長崎空港の滑走路に沿って、34万平方メートルの用地に太陽光パネルを設置する計画だ(図11)。発電能力は29MWを予定している。
太陽光パネルの反射で航空機の運航を阻害しないように、反射の少ない薄膜型の太陽電池を採用した。発電した電力は約10キロメートルの海底ケーブルで陸上まで送って、九州電力の送配電ネットワークに供給する。
さらに佐世保市に属する離島の宇久島(うくじま)でも、壮大なメガソーラーの開発が進んでいる。ドイツの太陽光発電会社Photovolt Development Partners社が手がけるプロジェクトで、島の面積の4分の1にあたる630万平方メートルの土地に営農型のメガソーラーを展開する計画だ(図12)。
島内の農地に支柱を立てて、その上に太陽光パネルを設置する。太陽光パネルの下では農作物を栽培したり牛を放牧したりできるようにする構想だ。発電能力は480MWを想定していて、実現すれば日本で最大のメガソーラーになる。宇久島と本土を65キロメートルに及ぶ海底ケーブルで結ぶ必要があるが、すでに九州電力と接続契約を済ませた。
ただし大量の太陽光パネルを設置することによって島の様相が一変することから、反対の声も上がっている。一方で衰退する離島を営農型のメガソーラーで活性化できる可能性があることも事実だ。現在のところ具体的な建設計画が明らかになっていないために実現性は未知数である。適切な情報公開を通じて住民の理解を得ることができれば、再生可能エネルギーを生かして地域の農業を変革するモデルケースになる。
*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −九州編 Part1 −」をダウンロード
2016年版(42)長崎:「海が生み出す風力と潮流発電、陸上では太陽光から水素も作る」
2014年版(42)長崎:「島々にあふれる太陽光と海洋エネルギー、農業や造船業の復活に」
2013年版(42)長崎:「離島に潜在する海洋エネルギー、地熱や太陽光を加えて供給率25%へ」
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