環境省は協議会の設立を受けて、高効率の火力発電所に限定して新設計画を認める見通しだ。ただし火力発電の効率を引き上げるだけではCO2削減目標の達成はむずかしい。電力会社10社の2014年度のCO2排出係数を見ると、最低の中部電力が0.494(キログラム換算、調整後)、最高の沖縄電力は0.816に達する(図4)。2030年度の目標値0.37と大きな差がある。
これからCO2排出量を目標値まで削減するために、電力会社の取組計画は国全体のエネルギーミックス(電源構成)に合わせた内容になる。2014年度の電源構成では火力が9割近くを占めていた(図5)。中でもCO2排出量の多い石炭が31%、石油も10%強ある。
2030年度のエネルギーミックスでは石炭を26%程度、石油を3%程度まで削減する必要がある(図6)。LNG(液化天然ガス)も46%強から27%程度まで大幅に減らさなくてはならない。一方でCO2を排出しない原子力と再生可能エネルギーの比率を20%以上に増やして、ようやく目標を達成することができる。
とはいえ原子力と再生可能エネルギーの比率をどこまで引き上げられるかは不確実な状況で、火力発電に伴うCO2削減の取り組みは前倒しで実施することが求められる。エネルギーミックスの観点から、効率の低い火力発電所を廃止することも不可欠である。
このため経済産業省は火力発電を対象にしたベンチマーク制度を適用する方針だ。各事業者が運転する石炭・LNG・石油それぞれの火力発電設備の効率を実績値で評価して、基準に満たない場合には改善を要求する。ベンチマークの指標は2種類を検討中で、1つは石炭・LNG・石油の目標値に対する実績値、もう1つはエネルギーミックスをもとに計算した発電効率である(図7)。
経済産業省は2016年度からベンチマーク制度を導入する。新たに発足した協議会のPDCAにも反映することになる。2030年度のCO2削減目標を達成するためには、火力発電所を数多く運転する電力会社10社とJ-Powerの取り組みが特に重要だ。協議会が1年後に公表する2016年度の評価結果に注目が集まる。
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原子力発電所と火力発電所の選別が進む、2030年に設備半減へCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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