電力を購入するユーザーの自宅屋根に「無償」で太陽光発電設備を設置し、そこで発電した電力を活用するユニークな電力小売事業が登場した。日本エコシステムの「じぶん電力」だ。ユーザー側は初期投資ゼロで自宅屋根に太陽光発電設備を導入でき、そこで発電した電力を購入して利用できる。同社では今後2年間で1万棟、5年後に10万棟の導入を目指す計画だ。
電力を購入するユーザーの住宅屋根などに太陽光発電設備を「無償」で設置し、そこで発電した電力を活用するユニークな電力小売サービスが登場した。日本エコシステムが2016年3月16日から申込受付を開始した「じぶん電力」だ(図1)。
日本エコシステムは情報通信建設会社の日本コムシスのグループ会社で、1997年に設立。太陽光発電システムの販売施工の他、蓄電池やオール電化家電の販売などのエネルギーシステム事業を展開している。2016年2月に小売電気事業者登録を済ませた同社は、2016年3月18日に会見を開き、新事業として開始するじぶん電力の詳細と今後の事業展開方針について説明した。
まず、じぶん電力を利用するユーザー側の視点から見ていく。じぶん電力に申込を行ったユーザーの住宅屋根に、日本エコシステムが無償で太陽光発電システムを設置する。パネルは全てソーラーフロンティア製のパネルを利用する。発電システムと発電した電力の所有権は日本エコシステムに帰属し、ユーザー側は日本エコシステムに使用電力量に応じた料金を支払うことで発電した電力を自宅で利用できる。なお、この電力は停電時などの非常時には無料で利用可能だ。
しかし、太陽光発電システムの場合、夜間など発電できない時間帯も発生する。こうした時間帯は新電力最大手のエネットから調達した電力を、日本エコシステムを通じて提供し補う仕組みになっている(図2)。ユーザーは時間帯に応じて「太陽光発電分」とエネットの電力を利用した「供給分」の2つの電力を購入する形になり、それぞれ料金体系も異なる。
じぶん電力の契約期間は20年間で、その間の発電システムの定期メンテナンスなどは全て日本エコシステム側が担当する。ユーザー側に費用は発生しない。なお、発電システムの遠隔監視にはNTTスマイルエナジーの「エコめがね」を採用した。
このサービスの大きな特徴の1つとなっているのが、契約期間の20年間が経過すると設置した太陽光発電システムはユーザー側に譲渡される点だ。ただし途中解約の場合は、契約経過期間に応じた価格でユーザー側が太陽光発電システムを買い取る必要がある。
会見に登壇した日本エコシステム 代表取締役社長の白髭博司氏は、じぶん電力について「日本エコシステムはこれまで全国で住宅向けを中心に約3万6000件の太陽光発電システムの販売・施工実績がある。こうしたノウハウを活用したじぶん電力は、CO2排出量削減の観点からも非常に意義のある取り組みだと捉えている。住宅に太陽光発電システムを導入したいが、初期費用の高さで断念する方も多い。そこで『電気料金を支払うだけで環境価値の高い電気を購入できる』という新しいモデルを提案しようと考えた」と語った。
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