「ネガワット取引」が2017年4月に始まる、節電した電力を100kW単位で動き出す電力システム改革(58)(2/2 ページ)

» 2016年04月05日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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直近5日のうち4日間の平均値を採用

 ネガワット取引に必要なルールの中で最も重要な点は、取引の対象になる節電量の算出方法だ。個々の需要家が通常の状態で使用する電力の大きさを時間帯ごとに「ベースライン」として設定する(図5)。ベースラインの電力と節電後の電力の差を合計したものが節電量になる。

図5 節電量を算出するための基準値「ベースライン」の設定イメージ。DR:デマンドレスポンス。MW:メガワット。出典:資源エネルギー庁

 とはいってもベースラインを適切に設定することは簡単ではない。過大に設定すれば節電量が実態よりも大きくなり、逆に過小だと節電量が小さくなって取引できる電力が少なくなってしまう。政府は標準的なベースラインの設定方法として「High 4 of 5」を採用する方針だ(図6)。直近5日のうち需要の大きい4日分の平均値をベースラインに設定する方法である。

図6 ベースラインの設定方法(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 ただし需要家によっては電力の使用パターンが独特なために「High 4 of 5」が適切な算定方法にならない場合も考えられる。そこでベースラインを事前にテストして、誤差が大きければ代替のベースラインを採用する。誤差が20%を超える場合には、取引の直前に計測した数値をもとに設定する方法などに切り替える(図7)。

図7 最適なベースラインを決めるためのテスト(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 こうして最適なベースラインを設定したうえで、実際にネガワット取引の対象になる電力量はスマートメーターを使って30分単位で計測する。取引の最小単位は100kW(キロワット)になる見込みだ。30分ごとの電力量に換算すると50kWh(キロワット時)を最小単位として取引を実行する。

 ベースラインの設定方法のほかにも、事前に決めておかなくてはならない重要なルールが2つある。1つは送配電事業者が不足分の電力を補充した場合に徴収するインバランス料金の計算方法だ。もう1つはネガワット取引が発生すると売上が減少する小売電気事業者が出てくるため、その売上減少分の補てんルールを決める必要がある。

 政府は複数の委員会を通じて2016年6月中にルールの詳細と全体の実施方針をまとめる予定だ。それをもとに必要なシステムの整備などを7月から進めて、2017年4月1日には新しい仕組みでネガワット取引を実行できるようにする。

第59回:「電力会社から乗り換えは68万件に、企業向けのシェアは8%台後半」

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