ネガワット取引を実施するためには、運用方法が最も簡単な直接協議スキームの場合でも、各種の契約に基づくさまざまな情報のやりとりが必要になる(図4)。その中心的な役割を担うのは取引を仲介するネガワット事業者だ。各需要家の節電量をもとに需要抑制計画を策定して、広域機関や小売電気事業者に通知する。
さらにネガワット取引を実施する前日になったら、需要家ごとの節電前の需要を想定した「ベースライン」のデータを広域機関に提出する必要がある(図5)。取引の当日には最終的な需要抑制計画やベースラインを関係者に通知して、電力の需給調整を円滑に実施できるようにしなくてはならない。
こうした一連の情報共有にはIT(情報技術)を活用したシステムが不可欠である。ところが肝心の広域機関のシステムに不具合が発生していて、ネガワット取引に必要な改修を2017年4月1日に間に合わせることができない状況だ。
現時点の見通しでは、ネガワット事業者が広域機関のシステムを使って需要抑制計画やベースラインの情報を提出できる時期は早くても2017年10月である。それまでのあいだは暫定的な運用方法として、メールや掲示板の仕組みを使ってデータを送信しなくてはならない(図6)。ネガワット事業者の負担が増えるため、取引の拡大を妨げてしまう可能性がある。
一方で2017年内の開始を想定している確定数量契約スキームと第三者仲介スキームについては、実施に必要なルールやシステムの整備に課題が残っている。政府の委員会で検討を続けながら、具体的なルールやシステムの要件を固めていく。ネガワット取引は直接協議スキームによる試験的な運用を通じて2017年度に実施体制を整備したうえで、2018年度から本格的に拡大していく見通しだ。
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