エネルギー産業に巻き起こるゲームチェンジ、対応すべき4つのトレンド蓄電・発電機器(1/2 ページ)

「エネルギー産業は大きなパラダイムシフトに直面している」と、グローバルでエネルギー事業を展開するシーメンスは警鐘を鳴らす。

» 2016年09月02日 09時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 シーメンスは2016年9月1日、エネルギー産業の革新をテーマに記者説明会を開催した。同社では、世界におけるエネルギー産業の新たなトレンドとして「効率化」「複合的エネルギー」「デジタル化」「持続可能なエネルギー」の4つを挙げ、日本のエネルギー関連企業もこれらに対応していくことが、競争への勝ち残りにつながると説明した。

エネルギーバリューチェーンの課題は世界共通

photo シーメンス 取締役のリサ・デイビス氏

 ドイツのSiemens 取締役風力発電や再生可能エネルギーなどを統括するリサ・デイビス(Lisa Davis)氏は「エネルギーバリューチェーンは世界中で同じような課題を抱えている。経営効率としてより高い効率が求められるようになる他、分散型システム化の進展、再生可能エネルギーの取り込み、クロスオーバー(複合的)エネルギーの活用、そしでデジタル化などである」と述べる。

 低炭素化や再生可能エネルギーの取り込みについては、COP21(気候変動枠組み条約第21回締約国会議)など地球温暖化対策の面からも導入を増やしていかなければならない状況であるのは明らかである。それぞれのコストも下がり続けており、従来の電源である火力発電や原子力発電、水力発電などに対し「電力会社にとっても再生可能エネルギーによる発電量を増やしていかなければならない状況になる」とデイビス氏は指摘する。

 こうした流れの中、エネルギーシステムそのものの分散化が進む。ただ、日本でも同様だが、変動幅の大きな再生可能エネルギーを多く導入しようとすると、系統の問題でエネルギーシステムそのものが不安定になる。そのため「再生可能エネルギーによる発電量を最大限活用し、エネルギーシステムそのものの安定性を確保するには、エネルギーを電力以外の形態で保持するクロスオーバー(複合)化が必要になる」とデイビス氏は述べる。具体的には電力を熱などに変換したり、水素などのガスに変換したり、運動エネルギーなどに変換したりすることである(図1)。

photo 図1 エネルギーシステム全体の最適化に向けたクロスオーバー化(クリックで拡大)出典:シーメンス

 一方で、こうした複雑化したエネルギーシステムを効率的に運用していくためにはICT(情報通信技術)の活用が欠かせない。スマートグリッドなどで示されるように、デマンドレスポンスやバーチャルパワープラント(仮想発電所)などへの取り組みが必須となる。こうしたICTによるエネルギーシステムの管理は、現在注目されているようなIoT(Internet of Things、モノのインターネット)、ビッグデータ分析などの技術と組み合わせ、新たなビジネスモデルやサービス構築へとつなげることができる。

 デイビス氏は「シーメンスでは、データ分析プラットフォーム『Sinalytics』によりガスタービンのデータを取得する遠隔監視を行い、最適な稼働を確保できるようにしている。同様に風力発電などでは最適にブレードごとの稼働を管理することで、出力拡大などにもつなげられている。デジタル化によりエネルギー産業としても新たな付加価値を生み出すことができる」と語る。

 さらに、デジタル化については、ICTベンダーなども積極的な提案を進めているが、シーメンスの強みとしては「グループ内でプロダクトシステム全体をカバーすることができる点が強みである。稼働状況の監視して見つけた不具合を設計や生産側にフィードバックして製品の競争力を高めることなどが可能だ」とデイビス氏は強調する。

 それでは、これらのトレンドが日本にどういう影響を及ぼすのだろうか。

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