静岡県では温暖な気候と傾斜の多い地形を生かして多品種の農作物を栽培している。農地に水を供給する用水路に小水力発電が拡大中だ。ブルーベリー栽培と太陽光発電、トマト栽培とバイオガス発電などユニークな取り組みも広がってきた。港の防波堤に波力発電を導入する計画もある。
静岡県の中央を流れる大井川は周辺地域の貴重な水源である。流域の9つの市と町に広がる農地に水を供給するため、国が中心になって終戦直後の1947年から22年間をかけて「大井川用水」を整備した(図1)。完成後40年以上を経過して老朽化した施設が増えてきたことから、大規模な改修事業を実施中だ。
用水路の改修に合わせて、維持管理費の軽減を図るために小水力発電の導入にも取り組んでいる。その方法は用水路の流れを分割するために設けた「分水工(ぶんすいこう)」と呼ぶ施設に水車発電機を設置する。大井川用水の分水工の中でも規模が大きい「伊達方(だてかた)分水工」と「西方(にしかた)分水工」の2カ所で2016年5月に発電を開始した(図2)。
2カ所のうち発電能力が大きい「西方発電所」では、分水工にある5メートルの落差を利用して発電する。既設の水路から水車発電機に水を取り込むために「ヘッドタンク」を造成したほか、発電後の水を分水工から先の水路に流すための「放水槽」、さらに増水時の余剰の水を流すための「余水吐(よすいばき)」を新設した(図3)。
発電能力は169kWになり、農業用水路を利用した小水力発電としては規模が大きい。年間の発電量は105万kWh(キロワット時)を想定している。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると290世帯分の電力になる。
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