次世代の火力発電技術として注目を集める燃料電池を組み込んだ複合発電システムの実証運転が始まった。都市ガスから燃料電池用の水素を生成して発電した後に、余ったガスを使ってガスタービンでも発電できる。250kW級のシステムで発電効率は55%に達する。2017年度の市場投入を目指す。
燃料電池と火力発電を組み合わせた複合発電の技術開発で先行する三菱日立パワーシステムズが東京都内で実証機の運転を9月21日に開始した(図1)。
高温高圧で作動する「加圧型複合発電システム」で、発電能力が250kW(キロワット)級の小型のシステムだ。オフィスビルや工場に設置して、都市ガスを燃料に使って電力と熱を供給できる。
複合発電システムの実証運転を開始した場所は、東京ガスが東京・荒川区で運営する「千住テクノステーション」の施設内である(図2)。この施設では都市ガスと再生可能エネルギーを活用して、地域内に電力や熱を供給する実証プロジェクトを実施している。燃料電池車向けの水素ステーションも併設している。
三菱日立パワーシステムズは2013年から千住テクノステーションに200kW級の加圧型複合発電システムの試作機を設置して実証試験を続けてきた。新たに250kW級のシステムの実証運転に取り組み、商用化に向けた技術評価を実施する計画だ。
今後は開発パートナーのトヨタ自動車と日本特殊陶業の工場、大成建設の施設にも導入する予定で、実証試験の場所を合計4カ所に拡大する。各地の実証試験を通じて性能や耐久性を検証しながら、コスト低減と量産のノウハウを蓄積する方針だ。業務用・産業用のエネルギー供給システムとして、2017年度に市場に投入することを目指す。
この複合発電システムに組み込んだ燃料電池は900℃の高温で作動する「固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)」である。家庭用のエネファームで使われている「固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fule Cell)」と比べて発電効率が高く、業務用・産業用の燃料電池で主流になる方式だ。
三菱日立パワーシステムズが開発した複合発電システムは最初に都市ガスを改質して水素を作り、燃料電池で発電する(図3)。さらに燃料電池で使い切れない都市ガスを燃焼させて、ガスタービンで発電する仕組みだ。ガスタービンで高圧になった空気を燃料電池に供給して発電効率を高める。
燃料電池とガスタービンの組み合わせによる発電効率は55%に達する。最先端の火力発電所で採用しているガスタービンと蒸気タービンによる複合発電と同レベルの高い発電効率になる。加えて発電に伴う排熱もエネルギーとして供給できるコージェネレーション(熱電併給)システムである。
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