燃料電池とガスタービンの複合発電、250kW級の実証機が東京都内で運転開始:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
燃料電池では水素と酸素を反応させて電流を発生する電解質が必要になる。SOFC方式ではセラミックを電解質に使う。三菱日立パワーシステムズが開発した加圧型のシステムでは、円筒形の圧力容器の中に細長いセラミック管を束ねたカートリッジを並べて、圧力容器の中で高温・高圧の状態で水素と酸素を反応させる(図4)。
図4 燃料電池モジュールの内部構造(上)、カートリッジの外観(下)。出典:三菱日立パワーシステムズ
1本のセラミック管は全長が1.5メートルで、直径は2.8センチメートルと細長い。電解質になるセラミック管の表面に酸素を取り込む空気極、裏面には発電用の燃料極を重ねた積層構造になっている。このセラミック管の中に水素と一酸化炭素を送り込むと、外から取り込んだ酸素と反応して電流を生み出すことができる(図5)。
図5 カートリッジを構成するセラミック管(画像をクリックすると内部のイメージを拡大)。出典:三菱日立パワーシステムズ、日本特殊陶業
千住テクノステーションに新たに設置したシステムでは、2013年に稼働した200kW級の試作機と比べてセラミック管を長く細く改良した。発電能力の増強に加えて、設置面積を40%以上も削減できた。この改良型のシステムは2015年に九州大学の「次世代燃料電池産学連携研究センター」に試作機を導入して実証研究を続けている。
三菱日立パワーシステムズは2016年度に各地で実証運転に取り組みながら、2017年度の商用化を目指す。さらに発電能力を1300kW級に引き上げた中型のシステムを2018年度に投入する計画がある。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、競技場や選手村に燃料電池を導入する予定だ(図6)。オリンピック・パラリンピックを機に、全国各地のオフィスビルや工場に燃料電池が普及していく期待は大きい。
図6 東京オリンピック・パラリンピックにおける水素エネルギーの活用イメージ。出典:内閣府
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2030年代に向けて火力発電の仕組みが大きく変わる。国を挙げて取り組む次世代の火力発電は燃料電池を内蔵する複合発電(コンバインドサイクル)がガス・石炭ともに主流になっていく。2030年代には発電効率が60%を超える見通しで、CO2排出量も現在と比べて2〜3割は少なくなる。
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不安定な再生可能エネルギーの出力をどう制御するかは大きな課題だ。九州大学が実施している「スマート燃料電池社会実証」では、こうした課題の解決策として再生可能エネルギーを水素として貯蔵する実証実験がスタートしている。さらに貯蔵した水素を燃料電池車に供給するなど、水素社会の実現に向けた先進的な取り組みだ。
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