上記のようにEコントロールは自由化の健全な促進のために徹底した仕組みを導入したにも関わらず、実際に電力会社の切り替え率は、かなり低いままで、2013年の時点でその切り替え率は1〜1.7%に留まっている。
電力自由化以降に市場をオーストリア全土に電気の販売を開始した“新電力”の多くは、かつて地域規模で電気を販売していた電力会社である。KELAG社はケルテン州のローカル電力会社であったが、自由化を機に全国展開した会社の代表である。これに続く形で、各地方の電力会社が全国展開を開始した。他には、小売りと送電を行っていたE-Werke社は、全国展開会社としてVoltino社を別会社として設立した。
さて、自由化以降、多くの電力会社は地域レベルから全国レベルに販売網を広げたわけであるが、これらの新電力が新しい営業エリアに対してさほど積極的なマーケティングをしていないということが調査により分かっている。
というのもこれらの電力会社の多くが、本気でもともとの自分たちのテリトリーの外で電気を販売していこうという気はなく、既存顧客とのビジネスだけで十分やっていけているからである。その背景には今現在でも、オーストリアの消費者の多くが電力会社の切り替えが可能であるということを認識していないという点がある。電力会社が特に努力をしなくても、既存顧客が他社に奪われてしまうというリスクが少ないのだ。
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