送配電事業の東京電力PGでは業務システムの構築費やスマートメーターの調達費の削減を進める。スマートメーターは2020年度までに合計で2880万台を設置する計画で、メーカーを公募する方式で単価を引き下げていく。2018年度には2010年度の時点と比べて3分の1まで単価を低減できる見通しだ(図4)。
小売事業の東京電力EPでも火力発電による電力の調達に入札方式を導入して、コスト削減額を拡大する。同じグループの東京電力FPよりも安く調達できる場合には、グループ外からの調達量を増やしていく方針だ(図5)。
こうしてコスト削減の取り組みを加速させる一方では、さまざまな問題も発生している。2016年4月に始まった小売の全面自由化にあたり、東京電力PGはスマートメーターの設置工事に大幅な遅れを生じて自由化の流れを阻害した。利用者が東京電力から他の小売電気事業者に契約を切り替える場合にはスマートメーターが必要だが、設置工事の遅れによって切り替えが滞る事態を引き起こしている。
さらに契約変更の手続きを処理するシステムに不具合が発生して、小売電気事業者が毎月の電気料金を計算するために必要なデータの通知にも重大な遅れが発生している。いずれもコスト削減による影響ではないとみられるが、社内外に大きな混乱をもたらしていることは事実だ。最近では東京電力EPが電力取引の入札価格をつり上げていた問題も発覚した。
東京電力グループが巨額のコスト削減を必要とするのは、福島第一原子力発電所の廃炉・賠償費を捻出するためである。すでに廃炉に向けた作業は進んでいて、2017年度には使用済み燃料の取り出しが始まる(図6)。廃炉・賠償費は総額で11兆円を見込んでいたが、上振れすることが確実になってきた。
その一方で自由化による利用者の減少や節電に伴う需要の減少が進んで、売上規模が縮小している。長期にわたって廃炉・賠償費を確保するためには、コスト削減を拡大せざるを得ない。東京電力HDは新たなコスト削減策を加えた総合特別事業計画を2017年初にとりまとめる予定だ。国の認定を受けてグループ各社で実施する。
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