全国屈指の観光地で知られる岐阜県・高山市は面積の92%を森林が占めている。森林で発生する間伐材を加工した木質ペレットを燃料に利用して、電力と熱を供給する事業が市内の温泉施設で始まる。木質ペレットからガスを発生させて電力を作り、排熱による温水を施設内に供給する計画だ。
木質バイオマス発電を実施する場所は高山市内にある温泉施設「しぶきの湯 遊湯館」である(図1)。ドイツ製の木質バイオマス発電設備を導入して2017年3月に運転を開始する予定だ。
発電能力は165kW(キロワット)になり、年間に126万kWh(キロワット時)の電力を供給できる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して330世帯分に相当する。このうち120万kWhを固定価格買取制度で売電する計画だ。
さらに発電に伴う排熱で温水を作り、館内の温浴施設に供給する(図2)。排熱を有効に利用することによって、温水を作るボイラーで使用する灯油を年間に124キロリットル削減できる見通しだ。
バイオマス発電用の燃料には地域の間伐材を加工して作った木質ペレットを利用する(図3)。高山市は森林の面積が日本で一番広い市で、市内の92%を森林が占めている。特に「飛騨杉」が有名だが、森林を健全な状態で維持するためには木を間引く間伐が欠かせない。
高山市では間伐した木材の活用を促進するために、木質ペレットを燃料に使えるストーブの普及を進めてきた。新たに大量の木質ペレットを消費できるバイオマス発電が始まれば、化石燃料から再生可能エネルギーへ転換する取り組みが加速する(図4)。
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