積水化学工業はスマートホームの新製品として、エネルギーを100%自給自足できる住宅を2017年1月から発売すると発表した。太陽光発電システム、京セラと共同開発した新型蓄電池、V2Hシステム、電気自動車を組み合わせる住宅だ。停電などの電力不安や、電気料金変動の影響を受けない次世代住宅として、年間100棟の販売を目指す。
積水化学工業(以下、積水化学) 住宅カンパニーは2016年12月12日、東京都内で会見を開き、1年を通じてエネルギーを100%自給自足できるスマートホームの新商品「スマートパワーステーション “100% Edition"」(以下、100% Edition)を2017年1月2日より販売すると発表した。同時に発表した京セラと共同開発の新型家庭用蓄電池なども導入し、積水化学の環境技術の集大成となるスマートホームブランド「セキスイハイム」のフラッグシップモデルとして、年間100棟の販売を目指す方針だ。
パリ協定が批准されるなど、住宅分野においても今後さらなるCO2排出量の削減およびエネルギー使用量の削減に向けた取り組みが求められている。政府目標では、2030年までに家庭部門の温室効果ガスの排出量を39.3%削減する方針だ。それに伴いハウスメーカーは、一次エネルギー消費量が実質ゼロになる「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の開発や販売注力している。
積水化学は1997年から太陽光発電システム搭載住宅の販売を開始。2016年9月時点で、同社が手掛けた太陽光発電システム搭載住宅はリフォームを含め17万7855棟を突破した。さらに2011年からはスマートハイムとして、HEMSや家庭用蓄電池、V2H(Vehicle to Home)などのエネルギー関連機器を搭載し、より効率的な「創エネ・省エネ・蓄エネ」を目指した次世代住宅を展開してきた。同じく2016年9時点で、同社のHEMS「スマートハイム・ナビ」搭載住宅は3万6830棟、蓄電システムやV2Hシステム搭載住宅は1万1540棟の実績があるという(図1)。
同社が2014年1〜12月にユーザーが入居した3078邸のセキスイハイムのうち、2015年1月〜12月の消費電力量・発電電力量・電力量収支について同社が調査したところ、約75%の住宅で光熱費の年間収支がゼロ以下を達成。さらに約59%で住宅全体のエネルギー収支ゼロ以上、つまりZEH相当のエネルギー運用を達成しているという。
このようにスマートハイムでは、政府が「2020年に標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均」という目標で普及を目指しているZEHの条件を既にクリアしている。一方、今回発表した100% Editionは、ZEHの「さらに上」のエネルギー効率・運用を目指した住宅だ。ZEHの場合、電力量だけを見ると、年間収支で太陽光発電システムなどによる発電量が、消費電力量を上回れば良い。つまり、発電量が電力需要を下回る冬季などには、一時的に電力を購入(買電)してもかまわない。一方、100% Editionではこうした「一時的な電力の購入」も不要にし、1年間を通じてエネルギーの100%自給自足を可能にするというコンセプトの住宅だ。
同社 住宅カンパニー プレジデントを務める関口俊一氏は、100% Editionの開発の狙いについてこう話す。「積水化学はこれまで、他社に先行してエネルギー住宅の開発を進めてきた実績があり、既に光熱費ゼロ、エネルギー収支ゼロ(ZEH)を達成する住宅を提供している。しかし2011年に東日本大震災、2016年には熊本地震があり、電気が数日にわたって利用できないということは、大きな生活の不安になるということを経験した。そこでさらに一歩進み、快適性を両立しながらエネルギー自給率100%を実現する『電力不安ゼロ』の住宅を提供したいと考えた」(図2)
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