いちご栽培に水素を活用、工場の廃熱や廃液もエネルギーエネルギー列島2016年版(38)愛媛(3/3 ページ)

» 2017年01月17日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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パルプの廃液をバイオマス発電の燃料に

 森林が広がる愛媛県では林業も盛んで、地域の木材を生かして製紙工場が数多く操業中だ。大王製紙は県東部の四国中央市で運営する「三島工場」で長年にわたってバイオマス発電に取り組んでいる(図9)。1972年に最初のバイオマスボイラーを導入して、木くずなどを燃料に電力を工場に供給している。

図9 「大王製紙三島工場」の全景(左)、既設のバイオマスボイラー(右)。出典:大王製紙

 新たに大規模なバイオマス発電設備を工場の構内に建設して再生可能エネルギーの電力を拡大する。燃料に使うのは紙の原料になるパルプの製造工程で発生する廃液だ。木材からパルプを製造した後に残る黒い廃液には有機成分が多く含まれていて、燃焼させれば再生可能エネルギーとして利用できる(図10)。

図10 パルプの製造工程で生まれる廃液を利用したバイオマス発電の流れ。出典:大王製紙

 大王製紙は廃液を回収して発電する設備を210億円かけて導入する。発電能力は61MWに達して、2019年度に運転を開始する予定だ。発電した電力は固定価格買取制度で売電することを想定している。年間に70億円の売電収入を見込めるのと同時に、再生可能エネルギーの活用を通じて2万5000トンのCO2を削減できる。

 CO2を削減する試みは県内の火力発電所でも始まっている。住友グループが新居浜市の臨海工業地帯で運転する「新居浜西火力発電所」では、石炭とバイオマスの混焼発電に取り組みながら、CO2の回収・利用を促進する計画だ(図11)。火力発電所の排ガスからCO2を分離・回収する設備を新たに導入して、年間に4万8000トンにのぼるCO2を化学品の生産に利用する。

図11 「新居浜西火力発電所」の全景(上)、主要設備(下)。出典:住友共同火力

 新居浜市内にある住友化学の工場では、必須アミノ酸の「メチオニン」を製造している。メチオニンの製造工程で副原料としてCO2を利用できる。2018年にメチオニンの生産設備を増強する予定で、それに合わせて火力発電所で分離・回収したCO2を供給する。まだ国内では事例が少ないCO2の分離・回収・利用に取り組む先進的なプロジェクトだ。

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