第3の要素は経済構造の変化だ。エネルギー集約的な工業生産から、エネルギー消費量の少ない一般消費材の生産や最終消費者向けサービスへと転換する。
この結果、中国のエネルギー需要の成長率は2035年まで年平均2%未満にとどまる。過去20年間は6%以上を維持してきた。2035年までのエネルギー需要量の増加のうち、半分は中国とインドが占めるものの、中国は次第に比率が下がっていく。
第4の理由はエネルギー原単位*2)の低下だ。年平均3%で減少し、2035年までに米国の水準に到達すると予測した(図3)。5%の経済成長が続いたとしても、エネルギー原単位が改善するため、エネルギー需要が伸びなくなる。
*2) ある量のモノやカネを生みだすために必要なエネルギーの量をエネルギー原単位(energy intensity)と呼ぶ。
中国のエネルギー需要がどのように変わるのか、全体像は分かった。次にエネルギー源ごとの変化を追ってみよう。まずは化石燃料だ。
中国は現在、世界最大の石炭需要国だ。後ほど触れるように今後、石炭の新規需要増はほとんどないものの、2035年時点でも世界の石炭需要の半分近くを中国一国が担う。
石油は石炭と様相が異なる。2035年に向かって石油需要の伸びが最も大きい国は中国だ。OECD諸国が石油需要を減らした分を、中国の増加が丸ごと打ち消す形になる。
化石燃料の成長頭は、二酸化炭素排出量の少ない天然ガスだ。需要が急速に伸びる結果、2035年には一次エネルギーの11%を天然ガスがまかなう。ガス需要は世界一となる。同時に国内の供給能力も高まる。シェールガスの供給でも世界第2位に成長する。
天然ガスについては不確定要素もある。第2回で紹介した予測12だ*3)。Outlookが最も実現可能性が高いとして提示したベースケースと比較すると、石炭からの転換政策がうまく進まなかった場合のシナリオでは、ガスの世界需要が大幅に鈍化する。年平均増加率が1.6%から1.1%に低下するのだ。
この低下分はどこで生じるのか。中国だ。中国だけで、0.5ポイントの差分のうち、約3分の1を占める。
*3) Outlookの12の予測のうち、1から11は最も実現可能性が高い「ベースケース」に基づくもの。Outlookは、1から11の予測がブレる要因を3つ挙げた(予測12)。交通革命の動向、広範囲な低炭素エネルギーの採用、ガス需要リスクだ。
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